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» 2014年12月02日 10時00分 UPDATE

場所や時間に縛られない ANAが目指す“働き方”の次のステージ (1/2)

空港、整備場、オフィス、取引先と、動き回ることが多い航空業界。現場では、そのたびに中断してしまう仕事を、いつでもどこでもすぐ再開できる作業環境が求められていた。そんな現場を変えたのは、どんな取り組みだったのか。

[後藤祥子,Business Media 誠]
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 全日本空輸(以下、ANA)といえば、いち早くiPadを使った業務改革に取り組んだことで知られている。客室乗務員(CA)にiPadを配布し、約1000ページのうち年間で約600ページが改訂され、“重さ2キロ”にも及ぶ乗務マニュアルをデジタル化。改訂にかかるCAの手間や持ち歩きの負担を軽減するとともに、学びの効率化や紙のコストの削減を図ったことで大きな注目を集めた。

 そのANAが今度は、社内スタッフの“ワークスタイル改革”に乗りだしている。なぜ今、ANAは新しい働き方にシフトしようとしているのか――。シトリックスの年次イベント「Citrix Mobility 2014」に登壇した同社上席執行役員 業務プロセス改革室長の幸重孝典氏が、その背景と同社が目指す“これからの働き方”について説明した。

グローバルの競争に勝つためには“働き方”を変える必要がある

 超少子高齢化時代が迫る日本は、国内マーケットの縮小が避けられず、多くの日本企業が対応を迫られている。航空業界も例外ではなく、海外顧客の獲得が急務だという。

 「今後の日本は少子化でマーケットがなかなか大きくならない。海外から日本に来る顧客、日本を経由して米国や欧州に行くアジアのお客さんに力を入れていくのがこれからのビジネスモデルになる」――。幸重氏がこう話すように、日本の企業はこれからグローバルの厳しい競争の中で勝ち残っていかなければならない。この戦いに勝つためには、コストの削減はもちろん、社員一人ひとりの生産性をどれだけ高められるかがカギになる。

 同社はこの10年、顧客向けサービスの質の向上を目指してインターネットやモバイル対応に向けた投資を徹底的に行ってきた。その効果もあって顧客サービスのIT化は順調に進んでいるが、社内に目を向けると、社員は雑務に時間をとられ、外回りのスタッフも“仕事が終わった後にいったん会社に戻る”というような、旧態依然とした働き方をしていることが分かったという。

 「これでは社員の生産性が上がるはずもない」――。ANAのワークスタイル改革は、ここからスタートした。

Photo 顧客満足度を上げるための取り組みは順調に進んでいたが、社内の改革は遅れていた

「業務プロセス改革室」を設置、旗振り役に

 “働き方を変える”というのは、じつはさまざまな面でハードルが高い。1つは“新しい働き方”を浸透させることの難しさだ。社内には働き方を変えたい人ばかりがいるわけではなく、今まで通りで十分と思っている人もいる。思いも働き方もさまざまなスタッフの理解を得るためには、一つひとつの改革に時間をかけて取り組む必要がある。

 もう1つは、導入・運用コストの捻出だ。取り組みを進めるためには経理財務部門の承認が必須となるが、収益アップにつながる“顧客サービスの開発・改善”と比べてワークスタイル改革は費用対効果が見えづらく、その説明は困難を極める。実際、この分野の改革が進まなかったのは、そこが理由だったと幸重氏は振り返る。

 そこでANAは、確実に改革を進めるためのチームとして「業務プロセス改革室」を設置。改革の構想から実現までをサポートする専任のスタッフを用意し、社内を説得するためのロジック作りに着手した。

Photo ワークスタイル改革の構想から実現までをフォローする業務プロセス改革室を立ち上げた

 まずは、PCの管理コストや交通費、通信費といったコスト削減が実現できそうな項目を洗い出し、次にどうしたら“時間を有効に使う働き方”ができるかを検討。併せて、新しい働き方にシフトした後に出てくる課題に対応するための指標と評価軸も策定し、PDCAサイクルを回せる体制も整えた。

 ただ、この2つの取り組みだけでは、投資に対する効果の面で説得力に欠けることから、おりから進めていたオフィスのフリーアドレス化で削減が見込めるオフィスの賃貸料なども説得材料に追加。さらに、この取り組みを3万人超のグループ規模に拡大することで、投資に見合う効果が得られるという見通しを立てて、経理財務部門の説得に成功したという。

Photo 働き方を変えるためにはIT投資が不可欠。それに見合う効果が得られるかどうかを説明するのが難しかったという

いつ、どこからでも“使い慣れた機器”で仕事ができるように

 ANA社員にとっての“時間を有効に使う働き方”は、各地の空港や整備場、オフィス、取引先など、さまざまな場所を行き来するスタッフが、いつ、どこに移動しても、使い慣れた機器で仕事が続けられるような働き方だ。

 例えば用事で空港から本社に行った場合、オフィスについたらすぐやりかけの仕事に取りかかれたり、外出先から事務所に戻ることなく1日の仕事を完了できたり、家庭の事情で出社できなくても家から普段と同じように仕事ができたりする環境が求められていた。

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