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» 2014年12月24日 08時00分 UPDATE

700万人メンタル不調時代に効く処方せん:怒りや不安とうまく付き合っていくためにすべきこと

マイナスの感情は、業務に支障をきたし、評判を落とすことにもなりかねません。しかし、これらの感情は個人の受け止め方や対処の仕方によって緩和できるのです。

[神谷学,Business Media 誠]

 ビジネスパーソンとして成長するために、付加価値を生み出せる経験を積み、スキルを磨きたいと思うことは当然です。そのためにはメンタルを安定した状態にキープすることが必要条件になるでしょう。

 怒りや不安といった感情は、業務に支障をきたし、評判を落とすことにもなりかねません。しかし、これらの感情は出来事によって決定されるのではなく、個人の受け止め方や対処の仕方によって決定されると心理学では考えます。

 つまり、マイナスの感情はあなたにはどうしようもできない出来事ではなく、意味付けを変えることで緩和できるのです。

「怒り」は自分でコントロールできる

 まず、自分が怒りを感じる場面や状況を思い浮かべてみてください。「部下が期限までに資料を作らなかった」「パートナーが部屋を片付けていない」――どうやら「ルール」や「期待」と関係していそうです。

 人は自分なりに大切にし、こだわっている決まりがあり、相手や対象に期待する行動や反応があります。ある人が重きを置いていることは、違う人にはどうでもいいことかもしれません。しかし、それが破られた、満たされないと感じると怒りを覚えます。

 また、期待が高い相手に対してほど激しく怒りを感じます。親しい人、気をかけている人により激しい怒りが向いてしまうのは、そのあたりに理由がありそうです。

 怒りの発生をコントロールするための第一歩は、自分がどのような状況で腹を立てるのかを想定しておくことです。場合によっては、その状況をよけることも必要です。

 また、体の震えや心拍動が強まるといった怒りにつながる兆候を感じたなら、それが爆発する前にスッと調整する自分なりの方法を考えておきましょう。

 例えば、深呼吸して「6秒」沈黙してみる。自分の好きな言葉を「10個」頭の中で唱えてみる。怒りの感情が行動に連鎖する前に、その感情から離れて冷静になるきっかけになります。

 こうあらねばならない、こんなことは間違っている、相手はこういうことをすべきであるという「すべき思考」は、うつ病になりやすい人の思考パターンとして知られています。あまりにも厳格過ぎるルールを課すことも「すべき思考」の1つかもしれません。それでは自分も相手もすり減らしてしまいます。

 例えば、ルールに適合しない相手の行動について、相手の立場から再評価して解釈してみましょう。「不慣れな仕事に部下は部下なりに頑張っているのだなあ」「相手も疲れて掃除する気力もないんだなあ」という気付きとともに、自分の設定したルールや期待が他人には厳しすぎるかもと修正するチャンスです。

過剰に不安を感じてしまうのは、アラームの誤作動

怒りや不安

 一方、不安の感情は「不確実性」と密接な関係があります。「正体は分からないけれども自分には危険が迫っている」という脅威を心身が感じて落ち着きを失い、身体的にも不調をきたします。くらくらしたり、赤面したり、汗をどっとかいたり、症状がひどくなると居ても立っても居られないと感じたり、パニックになって乗り物に乗れなくなったりということにもなります。

 人間も生き物なので、自然界の危険を敏感に感じ取るセンサーを五感で備え、それにより長い進化の過程を生き延びてきました。しかし、危険に対して不安が不適切に大きすぎるというのは、センサーの感度が高まりすぎて、過剰反応しているわけです。アラームの誤動作と言えるかもしれません。

 お客さんへのプレゼンテーションで失敗したらどうしよう、給与が上がらなかったらどうしようという心配は、一定範囲の緊張感を生み出す限りでは成果を上げるためにも意味があるかもしれません。しかし、極端な認知のゆがみでネガティブなイメージが根拠のないままどんどん膨らんでいくと、「破滅してしまう」などの極端な思考に至り、心身に大きな負担となります。

 不安に対応するには、不確実性がもたらす恐怖の実態を見極めることです。今とらわれている不安は、本当に破滅的なものなのか? 単なる影におびえているだけではないか? このように過大に見積もられたイメージを、現実的なレベルに割り引くという作業を行うことが必要です。

 プレゼンテーションに失敗したとしても解雇されることはないし、そもそもこれまでもちゃんとできてきたではないか。多少ぎこちないところがあるとしてもお客さんはちゃんと聞いてくれるだろう。あとは当日の成功確率を高めるためにもう少し練習をしてみよう――このように、より実態に合った認識ができれば、危険の影におびえず、現実的なリスクに対処する行動に集中できます。

自分だけでなく、相手のネガティブな感情にもケアを

 さて、ビジネスパーソンにとって自分の感情をコントロールすると同時に重要なのは、相手の不安や怒りにも巻き込まれず、相手を安心させるということです。相手のネガティブな感情を察知してケアするなどうまく扱うことにより、相手の信頼や協力も得られやすくなり、成果を出すことにつながります。

 筆者らは、組織内での調整や営業活動、接客などの感情スキルを用いた対人関係業務を「感情労働」と呼んでいます。作業が機械やシステムにアウトソースされていく将来では、人間に残される感情労働の重要性と、それが得意な人の価値はますます高まっていくものと考えられます。

 感情とそれにまつわる行動は、生まれながらで変えられないものではなく、適切なトレーニングによりある程度変容可能で、努力次第で一定の平穏を手に入れられます。そうして得た感情の安定が自分の潜在的なスキルや興味をより発揮できる土台となることでしょう。

参考文献:「EQI〜解説と自己開発の指針〜」(2012年) アドバンテッジリスクマネジメント

著者プロフィール:神谷学(かみや・まなぶ)

アドバンテッジリスクマネジメント 取締役 常務執行役員

東京大学法学部卒業、文部省(現文部科学省)入省。2001年にアドバンテッジリスクマネジメント入社。経営企画を中心に、メンタルヘルスケアや就業障がい者支援などの分野で現在の事業の柱を作る。


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