編集部F: へえ、短気の一面もあったんですね。歴史上の人物はいろいろな描かれ方がありますが、私の中での家康像は、子どものときに愛読していた『小学館 学習まんが 少年少女 人物日本の歴史』です。織田家に人質として送られるなど、幼少期からずっと苦労して、それでも我慢し続けていた姿が印象に強く残っています……と、古い話ですみません。
小日向: 本質的には短気な性格だったとしても、家康のすごいところは、自分をどんどんと進化させていくところです。例えば、有名な「しかみ像」です。これは武田信玄率いる武田軍と戦った「三方ヶ原の合戦」でコテンパンに敗れて、命からがら浜松城に逃げ帰り、そこで絵師に自分の姿を描かせたものです。
家康が祈願所とした浜松八幡宮
この発想は天才的だなと思いました。大将たる者がおもらしするまでの恐怖に追い詰められて、多くの家臣を犠牲にしながら逃亡したみっともない姿を、今後の戒めのために描かせたわけです。普通ならば一刻も早く忘れたいのに……。その失敗を忘れることなく、自分をどんどん成長させていったのが家康です。
いつの世にも天才はいますが、真似できない天才と、真似できる天才の2つのタイプがあると思います。織田信長や豊臣秀吉は前者でしょう。信長のような創造的破壊はとても真似できないし、秀吉の人たらしも天性のものです。
それに対して、家康の行動はほかの2人と比べてまだ凡人も学べることが多いのではないでしょうか。しかみ像のエピソードもそうだし、大敗を喫した武田軍から強さを学ぼうと戦術を取り入れたり、武田家滅亡後には家臣団を登用したりと、常に成長していこうとする姿勢が尊敬できます。
歴ドル・小日向えりさんの新刊書籍「いざ、真田の聖地へ」(直筆サイン入り)を抽選で3名の方にプレゼントします。詳しくは以下の記事の最後にある応募欄をご覧ください。
- 生涯でたった1度しか笑わなかった上杉景勝
上杉謙信から家督を継ぎ、重臣・直江兼続とともに上杉家の発展に大きく寄与した上杉景勝。その人物像は無口で武骨、何と言っても生涯で1度しか家臣の前で笑わなかったそうです。
- 本多忠勝の「蜻蛉切」は意外と……
昨年、“徳川四天王”の一人として武で名を馳せた本多忠勝の武器「蜻蛉切」が11年ぶりに一般公開されました。歴ドルの小日向えりさんも実物を見に行ったわけですが……。
- バカ殿と呼ばれ続けた北条氏政に光明? 「汁かけ飯」に新解釈
戦国時代、関東の雄として君臨していた北条家を滅亡させた氏政&氏直父子。特に氏政は「バカ殿」ぶりを示すさまざまな逸話が残っています。そのイメージを覆そうとしたのが先週放送の「真田丸」でした。
- 滝川一益と真田昌幸は似たもの同士だった?
歴ドル・小日向えりさんとともにNHK大河ドラマ「真田丸」にまつわる小ネタなどを紹介して、もっとドラマを楽しめるようにする新コーナー。第1回は滝川一益についてお話します(いきなりシブい!?)。
- 大河ドラマ主役の真田幸村、ところで何をやった人?
戦国時代の真田ファミリーを描く今年の大河ドラマ「真田丸」がいよいよ始まります。ドラマの中で主役となるのが真田幸村ですが、いったいどんな功績を残した人なのでしょうか。実は……。
- 虫嫌いに占いマニア、乙女な素顔の武田信玄
戦国時代、あの織田信長からも恐れられた武将といえば、甲斐の虎・武田信玄です。「風林火山」の軍旗を掲げ、果敢に諸国を侵略していった信玄公は勇敢そのもの。しかし実は乙女な一面を持っていたのをご存じでしょうか?
- 歴史とネットにどっぷり浸かる私
読者の皆さん、こんにちは。歴史アイドルの小日向えりです。この連載では戦国時代の武将を中心に、その人物の知られざるエピソードやビジネス的なスキル、さらにはその人にピッタリなネットサービスを紹介したいと思います。
- 生涯で93回も引っ越し!? クレイジー絵師・葛飾北斎の素顔
江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の「富嶽三十六景」を一度はご覧になったことがある人は多いでしょう。富士山の世界文化遺産にも貢献したと言われる北斎ですが、実はかなりの変わり者だったようです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.