NTTドコモは海の見える化を図るため、先行して「ICTブイ」の研究をしていた、函館未来大学の和田教授と共同で実証実験に取り組んだ。
「和田教授は大学の研究費でICTブイによる海の見える化に取り組んでいましたが、研究を持続させ、加速するためには事業として確立させていく必要がありました。そこでわれわれが合流し、新たに実験をスタートしたのです」(山本氏)
和田教授が研究に取り組む前にもICTブイは存在していた。1つは海上保安庁などが使用しているICTブイだが、高性能なため1つ1000万円近くするという。その後、できるたけコストを抑えてICTブイを開発した民間企業もあったが、それでも200万円近くはしたそうだ。
「問題は、センサーの精度が必要以上に高かったり、多機能だったことです。水温以外にも海流の向きなどさまざまなデータを取得しようとしていました。取りつけるセンサーの数が多く、そのため電力消費も大きい。蓄電するために太陽光発電のパネルをブイに設置する方法をとっており、それもコスト高につながっていました」(山本氏)
しかし、広く普及させてビジネスとして展開させていくには、できるだけ低価格のICTブイを作らなくてはならない。そこで同社はICTブイを新しく開発した。まず、漁師たちからヒアリングをした結果、最もニーズがあると分かった水温センサーだけに機能を絞り込んだ。それにより電力消費も抑えられたため、太陽光ではなく、乾電池で賄えるようになった。こうした改良によって低価格のICTブイが完成。そのICTブイを使った実証実験は3月から開始している。このICTブイで何ができるようになるのか。
「海に浮かべたICTブイは専用のスマホアプリとつながっています。そのアプリを開くだけで、1分単位で記録された水温データをグラフで見ることができるようになります」(山本氏)
最適なカキの育成温度は何度なのか、感覚ではなく、今後は蓄積された統計データから分かるようになってくる。つまり、“ユリの花が咲くころの水温は何度だった”のか、正確に分かるようになるのだ。
また、生産コストも格段に下がる。これまでは各養殖場を回って測るのに1時間以上かかっており、その度にガソリンも20リットル使っていた。それが、アプリを起動するだけで済むのだ。
「今まで水温を測るために掛かっていたガソリン代をこのICTブイに使えば良いわけです。もちろん、データが蓄積されれば現在の機能に加えて、水温予測機能や収穫のタイミングを教えるアラート機能といった付加価値もつけていけます」(山本氏)
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