新元素の名前は「ニホニウム」 中学生の感想は――「”日本”が入っていてうれしい」「ちょっとダサい」日本科学未来館ミニトーク

» 2016年06月09日 14時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 日本の理化学研究所が発見し、日本が初めて命名権を得た113番元素の名称案が「ニホニウム」であることが6月8日公表された。日本科学未来館(東京・台場)では9日、ニホニウムの研究内容や命名権獲得の意義などを同館の科学コミュニケーター、谷明洋さんが解説する小中高生向けのミニトークを実施し、日本で見つかった新しい元素についての説明に多数の生徒が聴き入った。

 113番元素を発見したのは理化学研究所のグループで、リーダーは九州大学の森田浩介教授。元素番号30番の亜鉛と同83番のビスマスを核融合させる衝突実験を、2003年9月から2012年8月にかけて繰り返した。その回数は1垓(がい)回(1兆×1億)にも上り、そのうち成功したのは3回だった。

 新元素として認められ、命名権が与えられたことが公表されたのは昨年の大みそかだった。国際純正・応用化学連合(IUPAC)には3月に元素名と元素記号の案を提出し、IUPACが8日、「ニホニウム(Nh)」という元素名とパブリックレビューの開始を公表した。年内に集まった意見を検討し、113番元素の名前が正式決定する。

113番新元素の名称案は「ニホニウム(Nh)」(出典:IUPACより)

 谷さんによると、元素の命名には「英表記の元素名の終わりは、必ず『〜ium』であること」「過去に使用した元素名は使えない」といったルールがあり、「元素の発見者や、科学界で大きな功績を模した人名になぞらえることもある」「元素を発見した国名や地名になぞらえることもある」といった慣例もあるという。

 ニホニウムは、これらのルールや慣習を踏まえた上で、「『日出ずる国』を意味する国名」「科学への信念と誇りが、原発事故による失望に代わるように」――という思いのもとで考えられた名前なのだという。

 加えて、「1908年に43番元素を見つけたとされた化学者・小川正孝の先駆的な研究への敬意」という意味合いもあるという。東北大学の総長も務めた小川正孝(1865〜1930)は1908年、トリウム鉱石から新元素を発見し、43番目の元素として「ニッポニウム」と命名。しかし検証の結果、新元素として認められることはなく、”幻の元素”となった。後の研究で、小川が発見したのは当時未発見だった75番元素である可能性が高いとされている。「ジャポニウム」ではなく「ニホニウム」になったのは、先駆者への敬意も込められている。

 同館には平日も移動教室などで多数の児童生徒が訪れている。新元素について説明する谷さんのミニトークを聴いた中学生は、元素や周期表について「不思議で面白い」とさまざまな質問をしていた。

 ちなみに、中学生は「ニホニウム」という名前についてどのような感想を抱いているのだろう。「”日本”が入っていてうれしい」「物理の分野で日本に強さがあるということを伝えられるのでいい」といった賛成意見が大多数だったが、「ちょっとダサい」「もっとかっこいい案があったのではないか」といった意見もあった。

科学コミュニケーターの谷明洋さんと、真剣に聞く中学生たち

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