昨季は嫌われていたのに、いかにして「名将」になったのか 広島カープの緒方監督赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2016年09月08日 07時11分 公開
[臼北信行ITmedia]

感情的になって“逆ギレ”することも

緒方監督は性格をどのようにして変えたのか(出典:広島東洋カープの公式Webサイト)

 だが、そうは言っても人の性格はそう簡単になかなか変わるものではない。ましてや、緒方監督は指揮官としてのルーキーイヤーで元来の「ぶっきら棒な性格」であることから、そこまでの余裕もなかった。結局、メディアから質問を受けてもはぐらかしてほとんど答えになっていなかったり、挙句の果てにはコメントに窮すると感情的になって“逆ギレ”することも多々見られた。

 そういう流れがあったので、メディアとの関係性は良好と言えない状況が続いていた。だから、ギクシャクしていたメディアの向こう側にいるファンには緒方監督の真意がなかなか伝わりにくい事態を招いてしまい、それで多くの鯉党からも輪をかけて反発を食らう一因となってしまっていたのだ。明らかに、このころは地元のメディアやファンからも「緒方監督で本当に大丈夫なのか」と疑心暗鬼の目が向けられていた。

 そんなムードの中、本拠地マツダスタジアムで迎えた2015年・レギュラーシーズン最終戦。ここで1つの“事件”が起きた。

 10月7日の中日ドラゴンズ戦は勝てばAクラス入りとなり、クライマックスシリーズ(CS)進出を果たせる負けられない一戦だったが、チームは痛恨の黒星を喫してしまった。もちろんCS出場を信じて集まっていたスタンドからは落胆のため息と怒声が複雑な感じで入り混じり、球場内にはなんとも言い難い感じで緊迫した雰囲気が漂っていた。

 それでも、この日はホームゲームの最終戦。たとえ緊迫しようがどんな形で終わろうとも1年間声援を送り続けてくれたファンにあいさつと御礼を口にしなければならない責務が監督にはある。ところが当日、緒方監督は用意されていたマイクの前に立つことはなく、グラウンド上でのあいさつが行われなかったのだ。

 これに対し、ネット上のユーザーたちが怒りを爆発させて噛み付きまくった。「監督が本拠地最終戦であいさつしないなんて前代未聞」「緒方の“ぶっきら棒”がここに極まれり」「カープのダメダメ指揮官は最後まで酷い態度だった」――。中には「緒方監督はCSに行けなかったからファンに野次られ、罵声を浴びまくるのが怖かったんじゃないのか」などと指揮官の意図的な“逃走”を疑う声まであったほどだった。

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