東海道貨物支線の旅客列車運行計画はどうなった?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2017年05月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP


 1年前の2016年4月7日、国土交通省の交通政策審議会は「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)」を発表した。これは、14年に国土交通大臣から発せられた諮問第198号「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」に対する回答案だ。国から「これから東京の鉄道はどうあるべきかまとめなさい」という依頼を受けた、その回答である。

photo 東海道貨物支線を貨客併用化する構想は……(写真はイメージ)

 この案について、発表翌日の4月8日から14日までパブリックコメントが募集され、団体・個人合わせて140人から314件の意見が寄せられた。これらの意見を尊重した上で、4月20日に委員会が開催され、“案”は正式に“答申”に決定。国土交通大臣に提出された。諮問第198号に対する“答申第198号”として、2000年の運輸政策審議会答申第18号「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」を更新した。

 “答申18号”は、15年度を目標とする基本計画として、東京圏の鉄道新線計画の記事などで紹介されていた。当時の運輸大臣に提出された内容だから、実質的に国のお墨付きを得た案件となり、実現へ向けて自治体や鉄道事業者が動き出す根拠となっている。今後は答申18号に替わり答申198号が根拠になり、30年ごろの実現、着手を目標とする。各事案について当事者が具体案を策定し、時間と費用を費やして開業へ向けて進んでいく。

 答申198号のなかには、表立って動きが活発な路線と、動きが見られない路線がある。動きが活発な路線は新空港線(いわゆる蒲蒲線・矢口渡〜蒲田〜京急蒲田〜大鳥居)だ。東急電鉄が関心を寄せてから進展があり、大田区は17年度中に事業主体を設置する方向だ。また、JR東日本の空港アクセス線(田町付近〜東京貨物ターミナル〜羽田空港)も、具体的なルート、方向性、事業費の概算見積もりが行われ、残すは費用負担の解決という段階にあるようだ。

 その半面、動きが見られない路線もある。関連自治体の公式サイトでも新規の情報がない。年に1回程度の定例協議会が行われる程度。答申198号でも「課題が多い」とコメントされた路線たちである。「国は事業の意義を認める。あとは問題を解決して進める努力をしなさい」というわけだ。国が認めた事業だから、実施に当たって国の補助を期待できるし、国から自治体への支援という形もあり得る。しかし、そこに至るまでの課題解決が困難な事例もある。

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