「パラダイス文書」がまったく盛り上がらない、残念な理由世界を読み解くニュース・サロン(1/5 ページ)

» 2017年11月16日 07時34分 公開
[山田敏弘ITmedia]

 最近、「パラダイス文書」という情報暴露がニュースになった。

 一体どんなニュースだったのか。2016年に話題になった「パナマ文書」についてはご記憶の方も多いかもしれないが、パラダイス文書とはパナマ文書の第2弾と言える暴露事件だ。パナマ文書は、パナマを拠点とする法律事務所モサック・フォンセカ社から盗み出された顧客情報などをもとに、世界中の企業や富裕層などがタックスヘイブン(租税回避地)で租税回避をしていた実態を明らかにした。

 今回ニュースになっているパラダイス文書は、バミューダを拠点にする法律事務所アップルビー社を中心に内部の顧客情報などが情報源になっている。そしてパナマ文書の際と同様に、大量の顧客情報がドイツの南ドイツ新聞に持ち込まれ、同紙は米国を拠点とする国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に情報を提供。ICIJは世界67カ国のジャーナリストと連携して情報を精査し、世界各地でその中身が報じられているのである。

 日本からは、朝日新聞とNHKがその調査・報道に加わっている。朝日新聞は「疑惑の島」と銘打って気合の入った特集を組んでおり、その中では、世界各地から集まった記者たちがスクラムを組んで大勢でバミューダのアップルビー社に直撃取材に行く様子をドキュメント仕立てに報じたりしている。

 だが残念なことに、そんなパラダイス文書は、携わったメディアの“勢い”とは裏腹に、日本をはじめ世界的にも大して盛り上がっていない。パナマ文書では街頭デモが発生したり、アイスランドやパキスタンで首脳が結果的に辞職に追い込まれるなどしたが、パラダイス文書への人々の反応は、例えば調査に加わっている英ガーディアン紙が「しらけている」と書いているくらいだ。

 ではなぜ盛り上がっていないのか。その理由は、パラダイス文書にはいくつか首を傾げたくなるような疑問がつきまとっているからだろう。

パナマ文書の第2弾ともいわれている「パラダイス文書」はなぜ盛り上がらないのか
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