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「この話なら誰にも負けない」を探そう人生やらなくていいリスト(1/2 ページ)

» 2018年05月11日 07時30分 公開
[四角大輔ITmedia]

編集部からのお知らせ:

本記事は、書籍『人生やらなくていいリスト』(著・四角大輔、講談社+α文庫)の中から一部抜粋し、転載したものです。記事内の写真は四角氏のInstagramから許諾を得て掲載しています。


うまく話せなくてもいい

 ぼくはずっと、人と話すのが苦手だった。

 いまでも、初対面の人と話す時は緊張するし、仕事で大人数を前に、プレゼンしたり講演する時、顔が熱くなる。40歳を過ぎてやっとマシになってきたけれど、それまでは、人前で話した後はいつも、自分がイヤになってとことん落ち込んでいた。

 「なぜうまく話せないんだろう」「自分にはコミュニケーション能力がない」。かつてのぼくのように、こう悩んでいる人も多いはず。でも、落ち込むことはない。たった1つだけでいい。自分が大好きな何かについて必死に話をして、他人に興味をもってもらうことができればいいのだ。

 ぼくが新卒で入ったのは、ソニー・ミュージックエンタテインメント。こういった音楽業界は、華やかなイメージが強いだろう。でも当時のぼくは、いわゆる「業界に就職しそうな学生」ではなかった。通うのは人気のイケてる大学でも、一流大学でもない。最新のトレンドにはうとく、リーダーシップもなかった。

 強烈な個性が集まる集団面接での自己アピールも不得意。人前で歌うカラオケも苦手、楽器もダンスもできない。楽譜も読めず、音楽的素養はナシ。さらに、体系立てて音楽を聴くような音楽マニアでもなかった。

 当時、ソニーミュージックの応募用紙には、白紙のA4スペースを使って「自分を表現せよ」という項目があった。ぼくはその真ん中に、渓流の野生魚アマゴの写真を貼り、小学生からの夢だった、その魚を釣り上げるまでのリアルな実話を書いた。

釣りのことなら誰にも負けなかった 釣りのことなら誰にも負けなかった(photo by 加戸昭太郎 @strju9)

 後述するが、ぼくはフライフィッシングを究めるために、ニュージーランドの湖=釣り場に移住してしまったほどの釣り好き。釣りをしている時がもっとも幸せで、当時、頭の中は釣りのことばかり、生活における最優先事項は、湖に通うことだった。

 当時はまだ、「複数の人間を前に、何かについて話す」なんてことは、何より苦手だったけれど、釣りの話ならいくらでもできた。高学歴で、流行に精通しておしゃれな人は無数にいただろうが、ぼくほど「釣りに時間と情熱」を費やしている同世代は、そんなにいなかったろう。周りから浮いて、変人と言われるような、「釣りを中心とした生き方」が、意図せず自然に、ぼくに「独創的な発想」をもたらし、ぼく自身をクリエイティブにし、「独特の存在」にしていたのだ。

 しかも、レコード会社志望の応募者の中において、ぼくのようなキャラクターは、間違いなく「オンリーワン」だったはずだ。面接官は、必ず、ぼくの応募シートの例のA4スペースに目をとめる。そして、まずそこから質問が飛んできた。当然ぼくは、釣りの話ならいくらでもできた。すべての面接が、その話に終始し、音楽の話をしたことは、ほぼなかった。

 その、「好きなことを、熱く楽しく、しかも手短にわかりやすく話せるところ」に可能性を感じてもらい、ぼくは内定を取ることができた。たかが「釣り」の話で、約400倍という熾烈な競争率を突破したのだ。

 話す内容はなんでもいい。まずは1つ「この話なら誰にも負けない」というものを探してみよう。「ウケる」「ウケない」は、この段階では考えなくていい。ぼくの成功体験を参考にしていただくために、面接までにしたことを、順を追って書いてみたい。

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