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カギは企業と学生の「共感」 AI使ったOB訪問システムが若手の離職防止に効く訳学生に待遇よりも社員の生き様を伝える(3/3 ページ)

» 2018年05月30日 12時00分 公開
[服部良祐ITmedia]
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「わが社」ではなくOB自身をアピール

 企業にとってVISITS OBは学生との最適なマッチングにとどまらず、採用のアピール方法の改善にもつながっている。例えば無名のベンチャー社員が熱い語り口で人気者になる一方、有名企業の所属であっても学生に「共感してもらえない」OBが一定数いる。

 「一般的な企業の就活サイトは社員個人でなく法人が主語なので、抽象的で分かりづらい。導入企業に対しては、OBが何の仕事をやっているかよりなぜやっているのかをプロフィールに書くよう指導している。主語は『わが社』ではなく、学生はあなたの話を聞きたいのだと、個と個でコミュニケーションをとるよう教える」(松本社長)

 「うちの社員は魅力ないですよ」と人事がもらす会社もたまにあるが、「自分の言葉で会社について伝えられていないのでは」などと率直な指導が入る。企業や社員にとっても、自分たちの仕事へのスタンスや採用方針を再考するきっかけになっているようだ。

 また、本サービスは就活前の学生でも登録できる。学生一人一人が1年生のときからどんな業種、OBに関心を持ち、それが年を追うごとにどう変化するのかというデータを追跡・蓄積している。1年生のときは何となく自分の興味あるテーマに合ったOBを探し、2年生になると業界別、就活時には企業名で検索するといった具合だ。

 「1年生にOBが『うちの会社はすごい』と(企業名で)アピールしてもダメ。学生が本当に求めている情報を発信しないと」(松本社長)。時間軸に沿って変わる学生の心理を踏まえることで、企業側も本当に自社に共感してくれそうな学生を採用できるのだという。

 2015年12月と最近スタートの本サービス。松本社長は「うちがやっているのはあくまで共感についての分析。企業の離職防止率や学生のエントリー数といった情報は取っていない」と明かす。一方で「学生と企業にセレンディピティ(偶然の良い出会い)は確実に提供できている。共感を元にしているから企業の離職率は下げられる」と自信を見せる。一見ふわふわとして見える共感という概念は、AIの力で離職防止の突破口となるか。

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