横綱の稀勢の里が引退できない、2つの背景赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)

» 2018年07月13日 08時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

 大相撲の名古屋場所で横綱白鵬が途中休場となった。初日から3連勝して快調な滑り出しを見せていたが、4日目に日本相撲協会へ「右膝蓋腱(しつがいけん)損傷、右脛骨(けいこつ)結節剥離骨折で2週間の安静を要する」との診断書を提出。2日目の取組前に滑って右足を痛めていたという。支度部屋で今年はここまで4場所中、早くも3回目の休場とあって白鵬時代にもさすがにそろそろ陰りが出てきたようにも思える。

 しかし、その白鵬とは比較にならないほどに窮地へと立たされている横綱がいることを忘れてはならない。稀勢の里だ。左大胸筋痛で8場所連続休場となり、年6場所制となった1958年以降の横綱では貴乃花を抜いてワースト記録を更新。3月の春場所から3場所連続の全休で、1勝4敗と3つの金星を配給して恥辱にまみれた1月場所5日目以降はここまで土俵から遠ざかっている。稀勢の里はこの名古屋場所休場が決まった直後、次のような無念の言葉を口にした。

 「来場所にすべてをかける」

稀勢の里、過去六場所の星取表(出典:日本相撲協会)

 正直、このセリフは聞き飽きた。そう思っている人は大半だろう。ケガの回復具合が思わしくなく万全な相撲が取れないことは分かっている。ただ、いかなる理由があるにしても休み過ぎだ。酷な言い方をあえてすれば、横綱としてとても見苦しい。個人的には、もっと早く引退すべきであったが辞めるにやめられず、周囲から無理矢理にここまで引っ張られている感が見え隠れしている。

 思えば貴乃花は2001年5月場所の取組で右ひざ半月板を損傷する大ケガを負いながらも強行出場し、横綱武蔵丸との優勝決定戦に臨むと上手投げで奇跡の優勝を成し遂げた。しかし、その代償によって翌場所から7場所連続休場に追い込まれ、引退への道を早めることになる。

 一方の稀勢の里も昨年の3月場所で左肩を痛め、その影響で左腕上腕部の内出血が悪化。それでも優勝争い単独トップだった照ノ富士を千秋楽で本割と優勝決定戦で2連勝し、奇跡の逆転優勝を飾ったことは記憶に新しいところだろう。この強行出場Vのツケによって力士生命を脅かすコンディション悪化を招いた点は貴乃花、稀勢の里ともに共通している。

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