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「定年後再雇用」の注意点は? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説必須キーワードを識者が解説(1/3 ページ)

» 2018年08月02日 08時30分 公開
[高仲幸雄ITmedia]

「働き方改革」の用語解説

働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「勤務間インターバル」を取り上げます。


 今回のテーマは「定年後再雇用時の労働条件(定年退職前からの待遇変更)」です。最近は、60歳で定年退職をして悠々自適に生活できる人は少数派で、むしろ多くの方々は定年退職後に一定の収入があることを前提に、ローンや家計を設計しているのではないでしょうか。会社側が、定年後の再雇用を「退職+新規入社」と捉え、再雇用時の労働条件に関しては会社で自由に設定できるものだと考えていても、定年退職前からの大幅な労働条件の変更(低下)がトラブルに発展するリスクをはらむ点に注意が必要です

photo 労働条件の変更を伝える際にトラブルになることも……(写真提供:ゲッティイメージズ)

(1)高年齢者雇用安定法の立場

 定年退職後の労働条件をどのように設定するかを検討するに当たって、定年退職後の継続雇用制度について、高年齢者雇用安定法の知識を確認しておきましょう。

 定年退職後の継続雇用制度では、1年程度の有期労働契約で、フルタイムもしくはパートでの勤務となるのが一般的です。

 厚生労働省の高年齢者雇用安定法Q&Aにおいても、以下の通り、同法の趣旨を踏まえたものであれば、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、使用者(会社)と労働者との間で取り決めることを認めています。

Q1─4:継続雇用制度について、定年退職者を継続雇用するにあたり、いわゆる嘱託やパートなど、従来の労働条件を変更する形で雇用することは可能ですか。その場合、1年ごとに雇用契約を更新する形態でもいいのでしょうか。

A1─4:継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないと考えられます。したがって、この場合は、(1)65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと(2)65歳までは、原則として契約が更新されること(ただし、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます。)が必要であると考えられますが、個別の事例に応じて具体的に判断されることとなります。

 また、以下のように高年齢者雇用安定法は、会社側が提案した労働条件に労働者側が同意しなかった場合、会社に定年退職者の希望に合致した労働条件で再雇用することまでは求めていません

Q1─9:本人と事業主の間で賃金と労働時間の条件が合意できず、継続雇用を拒否した場合も違反になるのですか。

A1─9:高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。

photo 高年齢者雇用安定法についてのQ&A(厚生労働省のWebサイトより
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