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» 2018年08月09日 07時30分 公開

新連載:ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論:オオグソクムシにウミグモ! 不気味な深海生物を食べ続ける水族館員のシンプルで真摯な理由 (1/6)

休日には入場待ちの行列ができ、入館者数の前年比増を毎月達成している水族館が、人口8万人ほどの愛知県蒲郡市にある。飼育員たちのチームワークと仕事観に迫り、組織活性化のヒントを探る。

[大宮冬洋,ITmedia]

ショボいけど、勝てます。 竹島水族館のアットホーム経営論:

人口8万人ほどの愛知県蒲郡(がまごおり)市にある竹島水族館は、お金なし、知名度なし、人気生物なしという、いわゆる弱小水族館だ。だが、条件面だけ見れば「しょぼい」としか言いようのないこの水族館は、わずか8年前は12万人だった来場者数を40万人まで「V字回復」させた。その理由はどこにあるのか。個性集団とも言える飼育員たちの「チームワーク」と「仕事観」に迫り、組織活性化のヒントを探る――。


正規の飼育員はわずか5人。強烈な個性と団結力で「史上最高」を更新中

 日本で4番目に狭い水族館が愛知県蒲郡(がまごおり)市にある。館長の小林龍二さん(37歳)によれば、「もしシャチを1匹飼うと水族館の敷地全てを使うことになる」という狭さだ。この竹島水族館の大きな生物といえば、アシカ、カピバラ、タカアシガニ程度。

 予算も少なく、人気生物もいない地方都市の小さな水族館。2006年には年間の入館者が12万人(採算ラインは24万人)台と低迷し、閉鎖の瀬戸際に立たされていた。失業の危機を感じた先輩職員は次々と辞めていく。

 もはや失うものは何もない。まだ入社数年目だった小林さんが主任飼育員となり、若いメンバーが一丸となって奮闘した。手書きPOPや親しみやすい企画展、深海魚に触れるタッチプールなどを次々と実現。笑ってしまうほどのアットホームさを前面に出して、数年後にはV字回復を達成した。今年度は毎月「史上最高」の入館者数を記録しており、年間43万人を必達目標に掲げるまでとなっている。その驚異的な軌跡は前回記事をご覧いただきたい。

phot 深海生物に触れる「さわりんぷーる」。生物の負担を減らすため、ローテーションを組んで交替で展示している

 小林さんの経営方針を一言で表現するならば、「魚ではなく人(客)を見ろ」である。水族館への就職を希望する人は例外なく生き物マニアで、放っておくと飼育や観察だけに集中してしまう。接客を苦手とする人も少なくない。しかし、それでは竹島水族館のような「弱小」施設はやっていけないのだ。生き物への情熱を前提にしつつ、それをいかに客に分かりやすく親しみやすく伝えて喜んでもらえるかが肝となる。

 竹島水族館に勤める正規の飼育員は、小林さんを含めて現在5人。いずれも小林さんの方針に共鳴して集って来た少数精鋭の若きメンバーだ。それぞれが強烈な個性を発揮しつつ、竹島水族館の存続と目標達成のために一致団結してまい進している。

 今回は三田圭一さん(33歳)を紹介しよう。切れ者の副館長である戸舘真人さん(38歳)が、「真面目だけど不器用。複数の仕事を同時にできない人間」と辛口の評価を与え続けてきた人物である。そんな三田さんが現在では、主任飼育員となってアルバイトや契約社員を含む後輩たちを率いている。彼が顧客サービスに自信をつけたきっかけは、未知の深海生物を人体実験的に食べて伝える「グルメハンター」活動を始めたことだ。

phot 三田圭一さん(左)と副館長の戸舘真人さん。「僕たち似ていますか? よく間違われます」
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