3.妊娠・出産等に関するハラスメント
妊娠・出産などに関するハラスメントには、「制度等への利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。妊娠・出産までであれば女性社員のみが対象となりますが、育児休業や介護休業は男性社員も対象となります。
妊娠・出産などを理由とする不利益取扱いは男女雇用機会均等法9条3項で、育児休業・介護休業などを理由とする不利益取扱いは育児・介護休業法10条や16条などで禁止されていました。これに加えて法改正により17年1月から上司や同僚による言動に対して、事業主に防止措置を義務付けられました(男女雇用機会均等法11条の2、育児・介護休業法25条)。
パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産などに関するハラスメントについて概念、法令上の根拠、特徴を以下に整理します。
1.パワーハラスメント
(概念)同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為。
(法令上の根拠)事業主に防止措置などを義務付ける直接の根拠規定なし。
(特徴)上司の職責としての正当な指導・教育の範囲を超えたものであるか否かの検討が必要。検討に当たっては、上司の言動(加害行為)の特定に加え、その原因や経緯の確認が重要。
2.セクシュアルハラスメント
(概念)職場において行われる性的な言動に対する労働者の対応により、当該労働者がその労働条件について不利益を受け、または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること。
(法令上の根拠)男女雇用機会均等法11条、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」。
(特徴)セクハラ行為は第三者がいない場で行われることが多く、事実認定が困難なケースもある。メールやLINEなどの客観的証拠による事実確認が重要。
3.妊娠・出産等に関するハラスメント
(概念)妊娠したこと、出産したこと、妊娠または出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により就業環境が害されること。
(法令上の根拠)男女雇用機会均等法11条の2。
(特徴)法改正により妊娠・出産・育児休業などを理由とする「不利益取扱いの禁止」に加え、上司・同僚からのハラスメントの防止措置も義務化。業務分担の見直しや安全配慮などの観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動はハラスメントには該当しない。
4.育児休業等に関するハラスメント
(概念)育児休業、介護休業その他の子の養育、または家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度または措置の利用に関する言動により就業環境が害されること。
(法令上の根拠)育児・介護休業法25条。
(特徴)男性社員も対象となる。その他は、「3.妊娠・出産等に関するハラスメント」の特徴と同様。
高仲幸雄(たかなか ゆきお)
中山・男澤法律事務所パートナー弁護士
早稲田大学法学部卒業。2003年弁護士登録。現中山・男澤法律事務所所属。国士舘大学21世紀アジア学部非常勤講師。著者に『改訂版 有期労働契約 締結·更新·雇止めの実務と就業規則』(日本法令)、『異動・出向・組織再編 適正な対応と実務』(労務行政)など著書多数。
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