2020年に開かれる東京オリンピック・パラリンピックを前に、スポーツの競技団体から暴力問題やパワハラ、助成金の不正流用などの問題が次々に起きている。
多くの競技団体から問題が噴出するのは単なる偶然ではなく、競技団体が抱える構造的な問題が背景にあるからではないだろうか。
その問いに答えてくれたのが、2017年8月に、31歳の若さで日本フェンシング協会会長に就任した太田雄貴氏だ。08年の北京オリンピックのフルーレ個人と、12年ロンドンオリンピックのフルーレ団体で銀メダルを獲得。15年の世界選手権では金メダルも手にしたフェンシング界の元エースは今、自ら協会の問題点を分析し、大胆な改革に挑んでいる。
太田氏に、日本の競技団体が抱えるさまざまな問題点や、フェンシング協会が現在進行形で取り組む改革について聞いた。
――東京五輪まで2年を切り、各競技が盛り上がっていることは間違いないと思います。ただ一方で、レスリング、アメフト、ボクシング、体操など、さまざまな競技団体で問題が起きています。現在の状況を見て、日本のスポーツ界全体に、どのような課題があると考えていますか。
スポーツ団体でなぜこれだけの問題が起きているのかを構造的な面で考えると、「人材の流動性が乏しい」という一言に尽きます。
協会の役員に就任するときや、退任するときに、自然に人が入れ替わる仕組みを作っている組織は、問題が起きにくい傾向があります。年齢で区切るという方法もあれば、任期を決めておく方法もあるでしょう。
人が替わることによって、その時々のベストを尽くすようになるはずです。一人がずっとトップのポジションに居続けると、自己実現のために動くなど、どうしても偏ってくるのではないでしょうか。
――それは、時期がくれば役員を全て入れ替えるということでしょうか。
必ずしもそうではありません。協会内で必要な仕事を明確にして、その人の適正にあったポジションに配置することが大事です。
いま、いろんな団体が「膿を出す」という表現をされています。でも私はその表現はあまり好きではありません。膿と言うと、何か悪い人のような言い方ですよね。でも「膿」といわれる人も、本来は協会に必要な人なのだと思います。おそらく別のポジションが向いているにもかかわらず、トップに就いたために消化不良のような状態になり、組織がおかしな方向に進んでしまうのではないでしょうか。
きちんと業務内容を定義して、その仕事に対する評価ができるようになれば、どこに人材が不足しているのかも見えてくると思います。
少なくとも「業務執行の責任者」に関しては、特定のポジションには長期間居続けない方がいいのではないでしょうか。それもただ「退く」ということではなく、「組織を存続させるために船長を変える」という発想で、うまく次代に引き継げるような環境整備が必要でしょう。役割分担も必要ですし、次の若い世代にチャンスを与えていくことが重要だと感じています。
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