商店会を立ち上げたものの、それでお客さんが増えるわけではない。「まずは、何か大きなイベントを仕掛けて人を呼びたいと考えました。お客さんが増えれば、店舗にとっても、商店会の取り組みの成果を実感しやすいからです」
どんなイベントをやれば人が来るのか。悩んだ間中さんの目に留まったのが、商店会に加盟する2軒のパン屋だった。その店は有名店で、遠くからもパンを買いに来る人が絶えない。さらに、三宿エリアの外にもパンの有名店がたくさんあることに気付いた。
もしかしたら、世田谷は「パンのまち」と言えるかもしれない。調べてみると、パン屋の数は東京都内で世田谷区が最も多いことも分かった。これを打ち出すイベントはできないか――。そうして生まれたのが、パン祭りのアイデアだった。
当時、まだパンをテーマにした大型イベントはなかった。「パン屋さんが出てくれるのか? お客さんは来てくれるのか? 売れるのか? 何も分からない状態でした」と間中さんは振り返る。一からのイベントづくりだったが、それまでの間中さんの活動が生きた。商店会が中心となってパン屋への声掛けや企画立案を行うほか、世田谷ものづくり学校のネットワークも活用して、デザインなどを担うメンバー集めを進めた。
模索しながらの初めてのパン祭りだったが、パン屋は約40店舗も出店してくれたという。その要因について、間中さんは「自分の本業がパン業界とは関係ないので、利害関係がない。参加費もできるだけ安く抑えるようにしました。そんな自由さと気軽さがあったから、『出てみよう』と思ってくれたお店が多かったのでは」と振り返る。さらに、当日は1日で7200人が来場した。パンという身近な食べ物でも、新しい楽しみ方がある。そこに注目と共感が集まった。
初めてのイベントが成功に終わり、継続して開催していく期待感が高まった。しかし、大きな問題も見つかっていた。それは「行列」だ。集客にはそこまで苦労しなかったが、第2回、第3回と回を重ねるにつれて来場者は増加。2時間以上並ばないとパンを買えない。行列対策が喫緊の課題となった。
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