18年も最大1時間半待ちの行列ができていたが、過去と比べると来場者数が増えているのに、行列は緩和されている。それは、会期を2日間に増やしたり、パンを買えるエリアを2つに分けたりして、来場者の動線を分散させる工夫を重ねてきたからだ。
17年からは、決まった時間に行けば並ばずに入れる優先入場パスの事前販売を開始。並んでパンを買って終わり、ではなく、講演やワークショップ、トークショーなどの催しにも目を向けるきっかけづくりも狙った。
優先入場パスは18年にさらに進化させた。商店会加盟店への来店を促す仕組みを取り入れたのだ。加盟店や当日の会場の一部で使える100円×3枚のクーポンを購入すると、それに優先入場パスの特典が付いている。パン祭り当日だけでなく、その前後にも地域に足を運んでもらうための仕掛けだ。当日は約200人が優先入場パスを使用。クーポンを購入してすぐにそれを使って買い物をする客の姿も見られたという。
運営面でも、やり方を少しずつ変えている。近年は、事務局スタッフに加え、事前準備と当日合わせて約200人のボランティアスタッフが活躍している。パンが好きな人やまちづくりに関心がある人など、多様だ。学生だけでなく、社会人経験があるボランティアスタッフも増えたことから、「行列整理のような業務だけではなく、準備にも主体的に関わってもらいたい」と考えた。そこで、18年は「物品管理」「動線」「演出」「受付」など、必要となる業務ごとにボランティアスタッフのチーム分けをして、分担して準備を進めた。この方法が、よりスムーズな運営につながったという。
こうして世田谷パン祭りは、毎年恒例の盛り上がるイベントとして確立されていった。そうすると、行政の理解も得られるようになったという。当初は、現在の会場の一つとなっている世田谷公園の使用は許可されず、屋外で飲食物を提供する屋台を設置することもできなかった。「地域のためのイベント」と見なされていなかったからだ。
間中さんは、区とのコミュニケーションを密にすることで、理解してもらえるように働きかけてきた。その取り組みは実り、「回を重ねたことで、地域のイベントとして見てもらえるようになった」という。今では、観光資源の一つとして期待してもらえるようにもなった。
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