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違反すると懲役刑や罰金刑も! 「残業時間の上限規制」の影響を弁護士に聞いた「知らなかった」では済まされない(1/6 ページ)

» 2018年12月20日 09時00分 公開
[今野大一ITmedia]

 2018年6月に「働き方改革関連法案」が国会で可決し、19年4月から施行される。残業時間の上限規制、年次有給休暇の強制付与、フレックスタイム制の拡充などに重点が置かれた施策だ。

phot 「働き方改革関連法」施行によって残業時間の上限が定められ、上限を超える残業はできなくなる(写真提供:ゲッティイメージズ)

 そんな中、勤怠情報などを管理するクラウドサービスを提供するチームスピリット(東京都中央区)でセミナー『働き方改革関連法案セミナー 法改正の内容と対応すべきポイントとは?』が開催された。19年4月から施行される「働き方改革関連法案」の内容と、企業団体の人事・総務に求められる具体的な対応を、TMI総合法律事務所パートナーの近藤圭介弁護士に聞いた。以下、その内容をお伝えする。

phot こんどう・けいすけ・弁護士。1982年生まれ。中央大学法学部卒業。専門は労働法全般、M&A。主要な著書に、『M&Aにおける労働法務DDのポイント』(商事法務)、『新労働事件実務マニュアル(第4版)』(ぎょうせい)など。

対応すべき3つの柱

 「働き方改革関連法」が19年4月1日から施行されます。関連法には懲役刑や罰金刑も含めた罰則規定がありますので、会社の人事部や総務部としては必ず対応しなければなりません。働き方改革関連法には3つの柱があります。(1)「長時間労働の是正」、(2)「多様で柔軟な働き方の実現」、(3)「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3つです。

 まず長時間労働の是正から見ていきましょう。

(1)「長時間労働の是正」

1.長時間労働の是正

 時間外労働の上限が、今回初めて法律によって規制されました。

2.中小企業に対する時間外労働の割増賃金に関する猶予措置を廃止

 これまでは60時間以上の時間外労働をさせた場合は、50%以上の割増賃金を支払わなければなりませんでしたが、実は中小企業については猶予装置がありました。その猶予措置が今回廃止されたのです。従って、23年4月1日以降は、中小企業も含めて全ての企業が、60時間以上の時間外労働に対して50%以上の割増賃金を支払わなければならなくなりました。

3.年次有給休暇の確実な取得

 こちらは年間で最低5日間の有休を必ず取得させなければならない義務を会社が負いました。これは罰則付きの法律ができています。こちらは非常に重要な法律改正ですので、必ず押さえておいてください。

4.労働時間の把握の実効性確保

 これは時間外労働の上限設定と表裏一体ですが、高度プロフェッショナル制度が適用される労働者を除く全ての労働者について、会社が必ず労働時間を把握しなければならないということが決められています。

5.産業医・産業保健機能の強化

 事業者は、衛生委員会に対し、産業医が行った労働者の健康管理などに関する勧告の内容などを報告しなければならず、また、産業医に対し、産業保健業務を適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません。

6. 勤務間インターバル制度の普及促進

 最後に、勤務間インターバル制度の普及促進です。退社した時間が夜遅くになってしまった場合に、翌日の出社まで決められた時間を必ず空けるというのが勤務間インターバルです。これはあくまでも努力義務ではありますが、会社はこの勤務間インターバルを普及促進するように努めなければならないという法律ができています。まだ採用企業は少ないですが、法律ができたことによって今後は普及すると見られています。

phot 以下、資料は近藤弁護士提供
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