ワタミは10月、傘下の飲食チェーンで集めた顧客のビッグデータを活用した集客実験を始めた。電話やネット予約などを通じて得た顧客属性を分析して誘客に生かす。コールセンターや予約代行サービスを手掛けるイデア・レコード(東京・新宿)の業務支援プラットフォーム「G.A.T.E」(ゲート)を導入した。
かつて「ブラック企業」のイメージが付いて逆風が吹いていたワタミだが、ここ数年は主力だった「和民」「坐和民」から多様な業態への転換を進めている。肉料理や海鮮といった今はやりの専門店に加え、好調な鶏料理店の「ミライザカ」と「三代目鳥メロ」を重点的に増やすなどして、2018年3月期の国内外食事業は5期ぶりに黒字転換を果たした。
業態転換と並行して同社が進めてきたのが、旧態依然としていた予約や販促システムのデジタル化だ。今後は予約システムから集めた膨大な顧客データを分析し、優良な見こみ顧客がどんな人かを突き止めてアプローチするなどして新規開拓につなげる。アナログなイメージのある居酒屋業界の代表格ともいえるワタミが、なぜビッグデータにこだわり始めたのか。
ワタミが予約システムの見直しに着手しはじめたのは16年のこと。メディアを活用した集客スタイルの刷新を検討したのがきっかけだった。
それまで同社が主に活用していた集客メディアは主にぐるなび、食べログ、ホットペッパーを始めとしたグルメサイトだった。「これらのサイトへの広告出稿に投資を集中していた。自社でアプリやメルマガもやってみたが全部失敗、そのときの顧客情報も捨てていた」(ワタミの担当者)。
飲食店にとって上記のような巨大グルメサイトはユーザーも多く、今も強力な集客装置だ。ただ、ワタミのような大チェーンとはあまり相性の合わない面もあるという。イデア・レコードの柏田康雄社長は「店舗数の多いチェーンはどの店もユーザー評価が『普通かそれ以下』くらいの数値になる傾向がある」と指摘する。突出した個性を売りにする個人店と比べ、どこでも均一レベルのサービスや料理が強みのチェーン店は、グルメサイトで平均より高めの評価を得にくくなるからだ。
加えて柏田社長によると、最近のグルメサイトでは1回の広告掲載ごとの料金ではなく、予約された人数分を課金するシステムが増えており、掲載店側の負担は増す傾向にあるという。
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