MaaSはこの文書が発表される2年前、14年にフィンランドで誕生した。技術庁と運輸通信省が連携して次世代交通サービスの在り方を検討し始めて、ここでMaaSという言葉が出てくる。そして16年にMaaSの具現化として「Whim(ウィム)」という名前でサービスを開始した。定額料金でポイントを購入し、アプリで目的地を指定すると、移動経路が表示され、使用する交通手段によってポイントを消費する。
現金からポイントへ、という手順が面倒に思えるし、各交通手段の価格が把握しづらいという不安もある。しかし、各社が運賃を臨機応変に変動し、それを反映させるためには、ポイント制の方が混乱しないで済むかもしれない。ポイントバックなどの利用推進策も各社で足並みをそろえられる。
「Whim」は電車、バスの他、タクシーやレンタサイクルも網羅し、予約手続きも自動的に行う。説明は面倒だけど、使ってみたら便利だよ、というサービスだ。
日本の既存サービスでイメージすると、乗り換え検索アプリで目的地を指定すれば、電車やバスの乗り換えルートが分かり、駅に着くと予約済みのタクシーが待っている。観光地に着くと、そこで周遊するためのレンタサイクルも確保されている。しかも最初に経路を選択した時点で決済が完了しているため、手続きはスマートフォンのWalletシステムやアプリに表示されたQRコードをかざすだけだ。
WhimのスタートとJR東日本の「技術革新中長期ビジョン」はともに16年。JR東日本の策定作業開始は13年というから、フィンランドとほぼ同時期である。公共交通を統合し、マイカー以外の方法でドアtoドアを実現しようとした。MaaSという言葉が出てくる1年前だ。そして「技術革新中長期ビジョン」にMaaSという単語は出てこない。MaaSは学術用語のような扱いで、一般に浸透する言葉としては説明が必要だからだ。慎重に扱わないと、「Web2.0」や「ユビキタス」のような死語になってしまう。
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