筆者は17年10月に、営業運転モデルの「一つ手前」にあたる「L0(エル・ゼロ)系」による試験運転に乗車した。その経験から言えば、リニア新幹線は既に安全性、耐久性だけでなく、乗り心地という意味でも完全に実用レベルに達していると感じた。確かに「振動」ということでは、完全に浮上して走行する中で微細な気流が発生するために、多少の揺れは残っていた。その意味では、現在のN700A系ほどではないが、初代「のぞみ」の300系よりは振動も車内騒音も抑え込まれている(関連記事「リニアの「徐行」は新幹線の最高速度だった」)。
筆者は現在工事が進捗している東京(品川)=名古屋間を、リニアが40分間で結ぶという未来が一刻も早く到来することを願わないではいられない。論点が曖昧なまま、禅問答のような押し合いが進む現状は憂慮すべき事態だ。静岡県との交渉については早期決着がされて、一刻も早く県内工区の着工が実現するよう望むばかりだ。
冷泉彰彦(れいぜい あきひこ)
ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。最新刊に『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。
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