――: 「働きがい」は原因で、「業績」は結果、ということを信じられない経営層も多いと思うのですが。
三村: とてもシンプルなことだと思うんですよ。
当社は、「人による競争力の最大化」を経営戦略の1つに位置付けているのですが、なぜかというと、競争力をヒト、モノ、カネの観点で考えると、モノについては、私たちは外資系のソフトウェア企業で、日本での商品開発には限界があります。カネについても、現状、資金調達はそれほど難しくなくなっていますから、競争力の源泉として大きいのは自ずと“人”になるわけです。
外部から有能な人材を獲得して、内部から有能な人材の流出を抑止する。そして働きがいをベースにして「人材ポテンシャルの最大化」を図ることこそが競争力強化につながるという考えです。
優秀な人材を採用するのが難しい時代になってきたからこそ、「働きがい」が大事な要素になると思っています。
今は売り手市場なので、優秀な人材は会社を選べる立場にある。また、昨今では企業の内部を知るための情報がいろいろありますから、彼らはその情報を元に、一番働きがいのある会社を選ぶわけです。Googleが人気なのも、働きがいがあるという評判があって、それを裏付ける情報もあるからではないでしょうか。
――: 働きやすさを求める企業はあっても、働きがいを高める取り組みをしている企業は、まだ少ないような印象を受けます。
三村: 面白い傾向があって、「働きがいのある会社」ランキングを見ていると、圧倒的に外資系が多いんですよ。
このサーベイを運営しているGreat Place to Work Institute Japanの代表に、「外資系企業の申し込みが多いのですか」と聞くと、「いや日本の会社も申し込んでいるのですが、外資系が上に来てしまうんです」っていうんですよね。
その理由を考えてみたのですが、日本企業は、社員の「忠誠心」に甘えていると思うんですよね。
外資系企業では、ちょっと「働きがいがない」と感じると、社員はすぐ辞めてしまいます。IT業界はさらにその傾向が高いですから、私たちにとって「働きがいのある会社にすること」は死活問題なんです。
日本の会社は、そう簡単に人が辞めないことに加え、プロパー採用で完結している面もある。だから「働きがいがないことが致命傷になる」ということに、なかなか気付けないのかもしれません。
ただ、最近では、外資系企業が“働きがい”を重視するようになってきているので、優秀な人材が外資系に流出し始めている。当社にも日本企業出身の人が増えています。
日本企業でがんばって働いている方々と話す機会があるのですが、「働き方」とか「働きやすさ」という問題以前に、「働きがい」の面で、気の毒な状況にある人たちも多いように思うんです。
「いつまでたっても責任のある仕事をやらせてもらえない」とか、「上司にお伺いを立てないと何も決まらない」「年功序列なのでがんばっても報われない」「チャンスがまわってこない」――といった具合です。
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