――: 社長業全ての中の何パーセントを、人材に対する取り組みに充てているのですか。
三村: 15%ぐらいですね。アイデアを考えて実行に落とし込むところまでが私の役割で、オペレーションは管理部門に任せています。
私は、ことあるごとに社員の声を聞くようにしていて、そこから何か課題が見えたときには仕組み化した上でアクションするのを、自分のスタイルにしているんです。性格的に、課題をそのままにしておけないんです。
仕組み化するには、部門を横断するような意思決定が必要になったり、当初目的としていなかった費用がかかったり――といったような、ある種の経営判断が必要になりますから、そこは社長しかできないことなんですね。
そもそも、働きがいのない会社は、社員の声を聞いていないことが多いですね。
――: それは経営陣が現場感覚をなくしている、ということでしょうか。
三村: それもそうですし、社員が日々苦しんでいたり、改善のアイデアを持っていたりしても耳をふさいでいる。確かにこの手の話は、聞くのが怖いんですよ、嫌なことを聞くのだから。怖いんですけど、そこはあえて聞くんです。なぜならそれはアイデアの種なのだから。
社員の声を聞かないから、どこに問題があるのかが分からなくて、打ち手のアイデアも思いつかない――。それが、「働きがいがない会社の状況」なのだと思います。
働きがいのある会社にするための取り組みを外部に公開するようになってから、多くの人が話を聞きに来るようになりました。社長さんもいらっしゃれば、人事部門の方もたくさんいらっしゃいます。人事部の人が話を聞きに来る場合はだいたい、「人事部には働き方を変えたいという思いがあるものの、社長に思いがない」、というケースが多いですね。みなさん、口をそろえて「いろいろやりたいけれど、社長が分かってくれない」って言うんですよ。
――: 会社は「大きな危機」に直面しないと変われない――という話も聞きます。
三村: でも、既に危機に直面していますよね。優良な人材がどんどん他社に流出しているのだから……。
――: 働きがいを高めるための重要な取り組みである「自社の文化と合う人を選ぶ」ことを徹底するためにはどうしたらいいのでしょうか。
三村: 当社では、社長である私がゲートキーパーになって、自社のカルチャーと合わなそうな人は、お断りしているのですが、それを見分けるのが、経営者やリーダーの仕事であり、責務だと思います。それを見抜く力があるかどうかは、重要な能力の一つだと思うんですよね。
カルチャーに合う合わないの見分け方について、言語化は難しいのですが、あえて言語化するのであれば「コーチャビリティ」があるかどうかを見ています。コーチャビリティとは、他人からのフィードバックや助言を受け入れられるかどうか、ということなのですが、ゲートキーパーとしての自分を考えたときに、これを重く見ていると改めて実感したのです。
人の助言を聞いて、それを養分にできる人と、何か言われても、「俺は俺のやり方で今までやってきたのから、あれこれ言うな」みたいな人とを比べると、後者は育たないですよね。
私たちが掲げるカルチャー、「高め合う文化」の大きなポイントは、「フィードバックし合う文化」なんです。互いに良いフィードバックをして、何か気付きがあれば、「ここを直すとさらに良くなりますよ」と日常的に言い合う文化がある。それを受け入れられる能力がコーチャビリティというわけで、ここをしっかり見ています。
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