池田 「らしさ」が空白で何にもないところはブランドが作れない。そのときにトヨタらしさって何なのかっていうのは、トヨタの人たちは多分意識して相当探さなきゃダメですよねって話をしました。ただ、トヨタの場合は、トヨタらしさは1つじゃないかもしれませんねと。最初は、エンジニアの人が、「らしさ」ってセグメントで分けるんですかねとかっていうから、いや、それは作る側の都合ですよねと(笑)。そうじゃないですよね、お客さんのニーズですよねと。
藤原 うーん。
池田 リニアなものを突き詰めてった側の、ファン・トゥ・ドライブを望む側のリニアがあって、反対側には、できれば自動運転にいきたい人たちの安楽な運転がある。これは2つとも多分存在する。そこに操作系のデリケートさを求めるような人に向けた商品と、そうじゃなくて、できる限り運転なんか本当はしたくないんだっていう人の商品は全然違ってくるはずです。ヤリスのブレーキはその狭間で、どっちに行くか今はまだ決められない。だから何が正しいとは今は言えないんです。
藤原 なるほど。
池田 だから、そういう意味でいうと、マツダが今、志している方向で、ああいうブレーキを仕立てたっていうのは、私はすばらしいと思っていて、すごく勇気が必要だっただろうと思うんですよね。
藤原 本当はすべてのクルマがあの世界になると、多分交通の流れはすごいきれいになるんですよ。今は交通の流れ、全然きれいじゃないので。カックンブレーキのクルマが前を走ると、もう本当に車間距離を空けないといけない。いつキュッとやられるんだと思うと、もう怖くてつけないっていう状態なんですから。だから、みんながリニアなブレーキだと、きれいに行けて、それが本当の渋滞対策でもあるはずなんです。だから、私は本当は皆さんにそっちへいってほしいと思ってます。一気にそこにいかないまでも少しずつでも変えていきたいと思うんですけどね。
池田 理想的にはそうですよねぇ。
藤原 自動運転志向の人は、逆にいったら、それを機械で助けてやるっていうところがあるので、先ほど言われたような(インタビュー第5回)、運転者にフィードバックしながら、ちゃんとゆっくり止めるからねっていうようにしてあげることは十分可能性があると思うので、その辺に目標を置きたいんですよね。全部のクルマが正しくスムーズにブレーキがかかるように持っていく2つの道がある。お客様によって違って。でも、ここに持っていきたいってことが、みんなができればと思うんですけどね。
池田 しかし、そこは難しくて、クルマ好きな人に限っても、でっかいディスクブレーキほど偉いとか思ってたりするじゃないですか。
藤原 (笑)
池田 だけど、でっかいディスクブレーキって、特に低速域のリニアリティ精度って全然ダメじゃないですか。なのにロードスターのブレーキを、もっとごついのにつけ替えたいみたいな人、いっぱいいますよね。でも、それは分かってないなって話じゃないですか(笑)、本当は。
藤原 ロードスターのブレーキはものすごく良いと思ってます。大きければ良いってものではないんですけどね、本当に。いや、分かります。すごくよく分かります。
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