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大戸屋の赤字転落、原因は「安すぎるから」?専門家のイロメガネ(4/7 ページ)

» 2019年12月11日 09時45分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

俺のフレンチは4回転で黒字?

 立ち食いで格安フレンチを提供して一世を風靡(ふうび)した「俺のフレンチ」は、回転率で勝負する業態だ。2年連続で赤字に転落すると報じられているペッパーフードサービスが運営する「いきなりステーキ」も、考え方としてはまったく同じだ。

 「俺のフレンチ」は原価率をあえて高めることで、価格に対して素材や料理の質を高めて集客力を強化した。結果として客一人あたりの粗利は少なくても、多数の客が次々に訪れれば、つまり回転率が高ければ結果として利益が出るビジネスモデルだ。

 「俺のフレンチ」がマスコミで盛んに取り上げられて大行列が発生し、お店にまったく入れないほど大人気だったころ、たまたま見かけたドキュメンタリー番組でもこのカラクリが説明されていた。客が一回転だと赤字、二回転でも赤字、三回転目か四回転くらいでやっと黒字になる、といった仕組みが数字と共に説明されていた。売り上げが増えればそりゃ黒字になるだろう、と思うかもしれないが、回転率で示されたことで思わず「なるほど!」と納得してしまった。

高級レストランは回転率が低い

 高級レストランならばランチに一回転程度、夜も二回転いくかどうか、といったところだろう。平日ならば12時からの一時間がピークタイムで、牛丼店のように1分で提供して5分で食べて帰る状況とは全く違う。

 平日のディナーも仕事が終わってから7時ごろに食事がスタートと考えれば、二時間でコース料理を食べ終えても次に席が空くのは9時から9時半程度になる。この時間からさらにディナー客がどれだけ入るか、と考えると、よっぽどの人気店でもなければ満席は厳しい。食べ終わりが11時を過ぎてしまうからだ。

 「俺のフレンチ」と高級フレンチの違いは薄利多売か、一人から多くの代金をもらうかの違いだ。薄利多売というありきたりな発想も、高価格が当たり前のフレンチに導入すれば立派なビジネスモデルになる。

※俺のフレンチは現在着席する形へとスタイルを変えつつも、居酒屋のように二時間制の導入で高い回転率を維持しているという(俺のフレンチ"高品質・激安"なのに儲かる秘密 | PRESIDENT WOMAN 2019/08/22)。

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