クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日本のEVの未来を考える(後編) 池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2020年01月21日 07時20分 公開
[池田直渡ITmedia]

誰がインフラコストを負担するか?

 さて、前編で書いた通り、EVの正しい利用法は、自宅の充電設備で夜間に時間を掛けて通常充電し、航続距離の範囲内で使うことだ。急速充電はバッテリーを傷めるし、現在の急速充電の料金体系は自宅での通常充電とのコスト差がありすぎる。つまり出先での充電(経路充電)はできる限り回避する使い方をするのが正しい。

 ならば、経路充電の利用者は限られてくる。インフラとして重要であるにもかかわらず、設備投資のコストを回収するのは非常に難しい。仮に安全の問題が解決したとしても、ガソリンスタンドに充電器を置くようなやり方では利益面からみて事業が継続できない。

 テスラでは自社で充電器を設置運営する方法を採っているが、これも悩ましい。実質的にテスラが設置・運用赤字を飲み込んで自社製品の普及のために拡充する充電器を、他社のクルマにタダ乗りされては困る。だからテスラの充電器は他社のクルマには使えない。

 つまりこの方式だと、メーカーの数だけ充電アダプターや規格が異なる充電器をバラバラに普及させなくてはならない。しかももしメーカーが倒産したりEVから撤退したりするようなことになれば、充電設備がなくなるかもしれない。倒産や撤退でこそないが、一例として日産は19年末、「急速充電使い放題」のプランを廃止した。ユーザーはこうした状況が起きても、言いなりになるしかない。

 充電インフラの設置・普及と運営を誰がやればいいのか? そこが解決しない限り、EVは普及しないだろう。

テスラが独自に設置しているスーパーチャージャーは、テスラ車でしか利用できない(写真は六本木ヒルズ内のスーパーチャージャー)

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