なぜマスコミは、企業の倒産を「社会のせい」にしてしまうのかスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2020年01月21日 08時05分 公開
[窪田順生ITmedia]

「現状維持型の小規模事業者」が多い

 さまざまなデータの中でも、中小企業庁の『小規模企業白書2019』の「存続企業の規模間移動の状況(2012年〜2016年)」が分かりやすい。

 これは16年時点で廃業せずに存続している事業者、295万社が、4年前の12年からどれほど、従業員を増やすなどして企業規模を拡大させてきたのかを調べたものなのだが、規模拡大に成功したのはなんと7.3万社のみで、95%(281.3万社)が「規模変化なし」だったのだ。

 4年経過しても従業員を増やせていないということは、4年間成長していないことでもある。なぜそんな競争力のないことになってしまうのかというと、答えは明白で「小規模事業者」だからだ。

 「小規模事業者」とは製造業その他で従業員20人以下、商業・サービス業で従業員5人以下の会社である。要するに、家族経営や個人商店的な「零細企業」である。

(出所:ゲッティイメージズ)

 このような小規模な会社は残念ながら、4年経過しても10年経過しても成長できないことが多い。ディスっているわけではなく、構造的にかなり難しいと申し上げているのだ。

 まず、売上規模が小さいので設備投資ができない。ということは、時代の変化に対応するようなIT化も遅れるし、新規事業への進出も難しい。変化に対応できないので、売り上げはジリ貧になっていく。当然、給料も上がらないので、新しい人材の獲得もできない。そうなると、昔からやっているビジネスを、昔からいる人材と、昔ながらの方法で続けるしか道がない。つまり「現状維持」だ。

 それを如実に示すのが先ほどの調査である。「規模変化なし」の281.3万社の中で「小規模事業者」は247.5万社と88%にも及んでいるのだ。

 このような「現状維持型小規模事業者」があまりに多いことが、「11年ぶりの倒産増」にも影響を及ぼしているのではないか、と個人的には考えている。

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