王者Netflixを倒すのは誰か?――動画配信各社の“戦国時代”、勝敗を徹底分析ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(3/5 ページ)

» 2020年03月30日 08時00分 公開
[数土直志ITmedia]

サブスク向きの「ドラマ」に強いワーナー

 映画興行ではディズニー・20世紀フォックスの後塵を拝するワーナーだが、傘下でアメコミ出版を手掛けるDCコミックのキャラクターやヒーローたちは映画だけでなく、テレビドラマ分野でも人気だ。特にテレビ番組での強さは見逃されがちである。

 ドラマチャンネル「HBO」は、世界的なヒット作『ゲーム・オブ・スローンズ』などで存在感が大きい。動画配信サービスの名称に「HBO max」をつけた理由でもある。

photo ワーナーのHBO max(公式サイトから引用)

 サブスクリプション型の映像配信ビジネスは、劇場映画よりもテレビ放送に近い。そう考えればワーナー・メディアが侮れないプレイヤーであることが分かる。

 さらに日本コンテンツに限れば、ワーナー・メディア傘下の「クランチロール」がある。日本アニメ世界配信の最大プレイヤーである。世界5000万ユーザー、有料会員200万人に日本アニメを届ける。近年はNetflixと同様、日本アニメへの出資・製作にも乗り出している。「クランチロール・オリジナルアニメ」を掲げ、日本のアニメ・エンタメ業界にとって見逃せない存在になっている。

“専守防衛”狙うNBCユニバーサルの「Peacock」

 もう1つのハリウッドメジャー、NBCユニバーサルはなぜ配信サービス「Peacock」を始めたのか。正直、ディズニー、Netflix、HBO maxをかわしてPeacockが動画配信で覇権を獲る未来は描き難い。

 Peacockの目的は、おそらく動画配信で覇権を取ることでない。むしろ現在、圧倒的なシェアを誇るCATV(ケーブルテレビ)市場をどう守るかにある。配信サービスの普及で一番打撃を受ける業界はリアルなレンタルサービスだが、もう1つは有線CATVである。NBCの親会社コムキャストはその米最大手なのだ。

 今後CATVの視聴が漸減していくのは明白である。何もしなければユーザーの多くは、ディズニーやNetflixに流出する。Peacockは、CATVを止める顧客の受け皿と考えれば分かりやすい。Peacockがスタート当初よりコムキャストのCATVとのバンドルサービス(組み合わせ販売)を積極的に進める理由である。攻めというよりも守り、自社の顧客を離さない専守防衛がPeacockの戦略だ。

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