検察庁法騒動から見る、Twitterの“大きすぎる影響力”と功罪世界を読み解くニュース・サロン(3/6 ページ)

» 2020年05月21日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

Twitterの「声」をどう見るか

 実は、これらの議論はどうでもいい。大事なのは、Twitterというプラットフォームをめぐっては、事実かどうか分からない主張でも、自分の都合のいい話であれば、多くの人が検証することなく乗っかってしまうことだ。そして伝言ゲームのように、どんどん既成事実化して広がっていく。

 そんなTwitterが盛り上がり、それを芸能人やメディアが取り上げることで世論を動かし、実際に国の法案を止めた。多くの匿名の人たちが、何が起きているのかよく理解していないプラットフォームを使って、そんなことを実現しているのである。

 そういう意味からも、Twitterを正当な民意として捉えていいのかという問題もある。選挙で選ばれた政権のやることをTwitterから上がった声で阻止するというのは、民主主義として機能していると言えるのか。

 「#検察庁法改正案に抗議します」は500万件以上のツイートを記録したが、その一方で、署名サイト「change.org」で行われた「『検察庁法改正案』を断念させるまであと一歩です #与野党こえて検察庁法改正を止めよう」というキャンペーンでは、35万340人が賛同の署名をしている(5月19日時点)。ちなみに同サイトは署名の信憑性が議論になっていたが、スパムのチェックや、IPアドレスによる同一人物の複数賛同の検知をしているという。

 この数字の差は何を意味しているのだろうか。

Twitterで広がった声をどう捉えるべきか

 海外を見渡すと、実際にTwitterではボットやスパムが蔓延しており、民主的には自分たちの声を届けられない政治的な思惑のある人たちが、それらを悪用して不正に世論を動かそうとしている。

 例えば、政敵を倒すためにフェイクニュースをばらまいて、偽情報を信じ込ませようとするケースがある。また、国外からそういった「工作」が行われ、内政干渉になるという側面も指摘されている。事実、2016年の米大統領選では、国内のユーザーだけでなく、米国外からもTwitterやFacebookでフェイクニュースや偽情報が拡散されて、選挙に多大な影響を与えたとして大きな問題になった。

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