「立地」の話は終えて、次は「精密さ」である。カプセルトイの過去をさかのぼると、「なんちゃっての歴史」と表現することもできる。一言でいえば、いかがわしいモノであふれていたのだ(残念ながら、いまもある)。筆者も子どものころに、10円玉を何枚か入れてハンドルを回したところ、有名人に似ているけれど、その人の名前は使っていないアイテムが出てきた記憶がある。例えば、タモリの姿に似ていて、トレードマークともいえる黒のサングラスもかけている。しかし、商品名は「タリモ」といった感じである。
当時は「版権」とか「許諾」といった言葉も知らずに、出てきたモノを手にして「キャッキャ」していたわけだが、ケンエレファントの商品は違う。虫メガネで見なければ分からないほど、とにかく本物とそっくりなのである。なぜ、これほど精密さにこだわるのか。カプセルトイ市場に参入するときに、自社の持ち味をどうやって出せばいいのか議論を重ねたという。結果、「リアルなミニチュアはどうか」といった話になって、つくり始めたのがきっかけだそうだ。
ただ、ここで疑問が一つ。A社の商品をよーく見て、そっくりにつくったものの、先方から「これはちょっと違うなあ。詰めが甘いよ〜ケンちゃん」と言われることはないのだろうか。「開発にあたって、必ず設計図をもらうんですよね。設計図に書かれているサイズなどを忠実に落とし込んで、商品は完成させています」(青山さん)
納得、納得。精密にできている背景に、その商品をつくっている会社から“本物の設計図”を手にしていることがあったのだ。図面に書かれた数字をベースに小さくしていけば、そりゃあ本物そっくりのモノができて当然である。
さて、取材が終わったので、「帰りに立ち食いソバでも寄ろうかな」と思っていたら、広報のMさんに呼び止められたのである。ん? なんだろう?
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