#SHIFT

それ、本当にブラック企業? 日本社会に誤って広がる「ホワイト企業信仰」が迎える末路働き方の「今」を知る(2/4 ページ)

» 2021年07月21日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

  例えば、ある企業が「ハードワークで離職率も高い」という点だけを採り上げて「ブラック企業だ」という意見があったとする。しかし、当該企業が求人募集段階で「当社はハードワークなので覚悟してください」と明示し、36協定を結んだ上で残業上限時間を守り、かつ残業代をキッチリ支払っていれば合法だ。さらには、「実績に応じて青天井の報酬が得られる」とか「濃密な経験を積めて独立できるため、あえてその厳しい環境を目指す」といったメリットが存在するケースもある。果たして、その会社はブラック企業といえるのだろうか。

 「お金」「キャリア」「働く環境」「自由な時間」――仕事や人生において何を優先するのかによって、ある人にとっては理想的な企業が別の人にとっては超絶ブラックであったり、その逆もあったりすることだろう。判断基準としての「ブラック企業」はあくまで相対的なものなのだ。

 実際、膨大な赤字を垂れ流し、平然と大量リストラをやっていても「大手有名企業」というだけで応募者が殺到する企業がある。一方、高収益で成長していても、「長時間労働でプレッシャーが厳しそう」というイメージから、ブラック企業だと認識され、忌避されている企業もある。

 このように、「いい会社」と「ブラック企業」は表裏一体なところがあり、こちらを重視すればあちらが立たない、といったことが起こり得る。ここで具体的な事例を紹介しながら、「何をもって『いい会社』とするか」「どんな要素があれば『ブラック企業』なのか」「『ホワイト企業』に入社できたら全てハッピーなのか」について考えてみよう。

 「いい会社」の定義もまたさまざまだが、ここでは簡略化して「その企業の商品やサービスのユーザーである顧客にとっていい企業」「その企業に投資をしている株主にとっていい企業」そして「働く従業員にとっていい企業」の3つに分けて考察する。

「顧客」「株主」にとって、いい会社とは?

 まず、顧客にとっていい企業とは、どのようなものだろうか。筆者なりに考えると、「リーズナブル、高品質な商品、サービスを提供している」「対応が迅速で丁寧」「365日、24時間営業している」「多少の無理難題は聴き入れてくれる」というポイントが思い浮かぶ。

 株主にとっていい企業であれば、まず当然「もうかっている」という要素が必要だろうし、「効率良く経営できている」「借金が少なく、財務体質が強固」「継続的に成長している」「差別化できる強みや技術がある」などが挙げられる。

 例えば、ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィックインターナショナルHDを例に見てみよう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.