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20〜30代若手社員に人気、企業は戦々恐々 最近よく聞く「退職代行サービス」に潜む危険なワナとは働き方の「今」を知る(1/5 ページ)

» 2021年07月05日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 「パワハラ」「セクハラ」にとどまらず、世の中には「●●ハラスメント」が数多く存在する。SNSに職場の人間関係を持ち込む「ソーハラ(ソーシャルメディアハラスメント)」や、ITやシステムに詳しい人が、それらを苦手とする人に嫌がらせをする「テクハラ(テクノロジーハラスメント)」など、現代ならではのハラスメントも生まれている一方で、従前職場で見られていた嫌がらせ行為に「ハラスメント」名が冠されたことで、あらためて注目を浴びるケースも散見される。

 例えば、就職活動時に複数企業から内定を得ている人に対し、自社が内定を出すことと引き換えに他社内定の辞退を迫る行為は「オワハラ(就活終われハラスメント)」だし、妊娠・出産した人に対する嫌がらせは「マタハラ(マタニティハラスメント)」、育休取得希望の男性社員に文句を言ったり、取得を邪魔したりするような行為は「パタハラ(パタニティハラスメント)」と呼ばれる。

 その一つに「慰留ハラスメント」がある。

 わが国の職場では昔からよく見られる光景(本来あってはいけないのだが)で、退職の意志を示した従業員に対して、会社側が必要以上の引き留めを行い、退職希望者を困惑させることを指す。

 「ウチでやり切れないようでは、どこに行っても通用しないぞ!」といった説教で終わるくらいならまだマシな方で、「この業界で仕事できないようにしてやる!」とどう喝されたり、「退職など許さない!」といって退職願を受理しなかったり、あるいは「代わりの人を採用するためにかかる費用を払え!」「損害賠償請求するぞ!」など、脅迫めいた言動で無理やり退職を断念させようとするケースも実在し、筆者にもよく相談が寄せられるのだ。

 実際、日々転職サポートを行っている人材紹介会社のアドバイザーを対象としたアンケートにおいて、「退職時・退職後にトラブルになる理由」として最も多かったのは「企業からの強引な引き止め」(76%)であった。

 ハラスメントに対する捉え方が厳しくなっている昨今、退職希望者にネガティブな印象を与え、組織の評判まで落としかねない強引な引き留めを、企業はなぜやってしまうのだろうか。

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