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20〜30代若手社員に人気、企業は戦々恐々 最近よく聞く「退職代行サービス」に潜む危険なワナとは働き方の「今」を知る(2/5 ページ)

» 2021年07月05日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 各社の事情は異なるものの、おおむね「常に人員不足の状態で、退職者が出ることで他従業員に負担のシワ寄せが出ることを避けたい」「新たに人を採用することが困難」「補充人員採用には時間もお金も手間もかかる」「退職者を出してしまった上長の社内評価が低下する」といったところであろう。いずれも会社側の一方的な都合に他ならず、まさにそのようなメンタリティーだからこそ、従業員が離れていってしまっているのかもしれない。

 このような慰留ハラスメントを避けたい人や、職場の人間関係が悪いためにそもそも退職を切り出しづらい人、出勤自体が苦痛で今すぐ辞めたい人などを中心に利用が広がっているのが「退職代行」サービスだ。文字通り、依頼者に代わって退職手続を代行するサービスであり、依頼者は会社側と一切コミュニケーションをとる必要がなく、精神的プレッシャーやハラスメントと無縁で退職できることを売りにしている。

 「自分で選んで入った会社なのに、自分で辞めると言い出せないなんて根性がない!」「『逃げの転職』を助長するのではないか? 仕事を引き継ぐ人の立場も考えろ!」などと、このサービスの存在自体と利用者のマインドを疑問視する声は以前から存在するが、一方で退職代行へのニーズは根強いものがあり、利用者数も拡大基調にある。

20〜30代、「辞めるときは退職代行を利用」が2割

 民間調査機関の調査によると、20〜30代における退職代行サービスの認知率は63.9%におよび、「退職代行の利用を検討している」と回答した割合が44.7%、そして「辞めるときには退職代行を利用する」と確定的に回答した人は約2割も存在していることが明らかになっている。実際に、専門業者や弁護士事務所など運営母体はさまざまだが、退職代行を名乗るサービスはすでに30以上も展開しているのだ。

 サービスの流れ自体は各社ほぼ同様だ。Webサイトのフォームや電話、LINEなどで問い合わせを行い、雇用形態や退職希望日、退職に当たってのハードルや悩みなどを伝える。打ち合わせ終了後、代行業者に料金の支払いを済ませれば、依頼者は会社や上司と直接やりとりをすることなく、自動的に退職手続が完了する仕組みだ。ちなみに料金は専業の代行業者で2万〜5万円程度、弁護士事務所が運営するサービスではその料金に加えて1万〜3万円といったところが相場のようである。また「退職できなかった場合は料金を全額返金する」との保証をつけているところがほとんどだ。

 会社側と直接やりとりする精神的負担を忌避したい利用者にとっては、全ての手続きを代行してくれ、返金制度もあるのならば、利用のハードルも低いに違いない。実際、各業者は「退職は労働者に認められた権利」として、辞めることは自由であり、基本的にトラブルも存在しないとうたっている。では、果たして退職代行は本当に低リスクのサービスなのだろうか。

中には法律に抵触する範囲も?

 「退職代行サービスを運営している母体はさまざま」と先述したが、実はこの母体の違いによって、各社が提供できるサービスの幅にも違いが出るのだ。しかも、場合によっては法律に抵触するリスクも存在する。ここからは、退職代行サービスの適法性について検証していこう。

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