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» 2021年07月05日 05時00分 公開

20〜30代若手社員に人気、企業は戦々恐々 最近よく聞く「退職代行サービス」に潜む危険なワナとは働き方の「今」を知る(3/5 ページ)

[新田龍,ITmedia]

 現在、退職代行サービスを運営している母体は大きく「民間業者」「労働組合」「弁護士事務所」に分類できる。このうち、もっとも対応可能領域が広いのは「弁護士事務所」だ。彼らは退職希望者から委任を受けた代理人として、退職意志伝達のみならず、有給休暇の買い上げや退職日調整、未払金支払いや損害賠償請求など、あらゆる交渉を行うことができるためである。その代わり、料金は最も高額で、基本料金に加えて別途相談料や、未払金が回収できた際の成功報酬などが発生する可能性がある。

民間業者の場合は「非弁行為」に要注意

 一方、最も対応できる領域が限られているのが「民間業者」である。先ほど弁護士事務所は「あらゆる交渉ができる」と説明したが、厳密にはこの「交渉」は法律事務に該当し、本来は弁護士、もしくは弁護士法人しか行えないという決まりになっている。

  • 弁護士法第72条

「弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関し、代理・仲裁・和解その他の法律事務を取り扱うことはできない」


 従って、弁護士資格を持たない民間の退職代行業者ができることは、あくまで「使者として退職希望者の退職意志を伝える」という1点のみであり、それ以外の業務引継ぎや未払金支払い、有休消化といったもろもろの退職条件交渉を行うことはできない。もしやってしまえば、「非弁行為」に当たり、違法となってしまうのである。

退職代行の利用には注意が必要(画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ)

 しかし、民間業者の中には「使者」としての役割を超え、本来は違法な条件交渉までやってしまう悪質業者が存在する。彼らのような法的に代理権限がない者が交渉した場合、たとえそれが善意によるものであっても、交渉内容や退職そのものが無効になるリスクがあるのだ。また、会社側が良かれと思って提示した有休取得や退職条件交渉を取り持つこともできないため、結果的にあらためて弁護士に依頼しなければならなくなったケースもあるなど、トラブルに至る事例も報告されている。

「弁護士監修」でもリスクはある

 なお、民間業者の中には「弁護士監修だから安心」と宣伝しているものもある。一見、合法的に見えるが、その場合は監修した弁護士が退職代行実務にいかほど関わっているかがカギとなる。弁護士資格を保持した本人が交渉実務を担当してくれるなら何の問題ないが、当該弁護士が単に名前を貸しているだけで、実質的に関与していないケースの場合、代行業者が交渉を行えば非弁行為であることには変わりがない。そうなれば当然違法であり、トラブルの恐れがあることに留意すべきだろう。

 退職代行業者が非弁行為の交渉に介入することで発生するトラブルを回避するため、一部企業では「退職代行業者とは交渉しない」と宣言し、仮に代行業者から申し出があっても「本人の意思かどうか不明なため、本人から直接の申し出でなければ応じられない」という形で対応しているケースもあるようだ。そうなると民間業者では交渉ができず、結果的に利用者が最も避けたい「退職希望者本人に、会社から直接連絡がいく」という事態につながってしまうリスクがある(退職の申し入れそのものは拒否できないので、あくまで民間業者が介入できない「退職条件交渉」に持ち込むという形である)。

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