仮に金融不安が引き起こされた場合、資金の退避先が話題となるだろう。その筆頭に挙がるのが、世界的に普遍の価値を有するゴールドだ。しかし、世界的な金融緩和によるリスクマネーの供給によって、ゴールドのような資産クラスにも投機マネーが流入している現状もある。現に、20年8月に触れたプラチナと金の価格逆転現象は未だ継続しており(記事参照)、ゴールドはその本質的な価値を超えて買われているともいえる。
一方でプラチナのような希少金属は、工業需要もその価格を維持する要素だ。そのため、景気後退による貴金属需要の後退とリスクマネーの退避によって価格が目減りする可能性もある。
リーマンショックにおけるゴールド価格は08年3月までの上昇相場から一転、08年10月まで1トロイオンス=1000ドルから682ドルまで下落した。その後は切り返しているものの、金融ショック時にはゴールドなども含むさまざまな資産クラスが売られる傾向にある。
現状では、リーマンショック時と比較して、個別の金融機関の支払い不能が各所に波及するシステミックリスクに対応するさまざまな規制が敷かれている。そのため、全く同じ金融危機が起こる可能性はそれほど高くないものの、今後は「中国恒大」にまつわるニュースには注意を払っておきたいところだ。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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