不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/8 ページ)

» 2022年05月07日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 私が“鉄道系ネットライター”として最初に取材したホテルは「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」の「まるでNゲージトレインビュー宿泊プラン/朝食付き」で、記事は10年だった。

極上のトレインビューリゾート体験--小田急ホテルセンチュリーサザンタワー(10年6月9日付、マイナビニュース)

 ホテルで最も低層となる22階の景色を、Nゲージジオラマに例えた名付けだ。しかし当時は名付けただけで、サービス自体はほかの部屋と同じ。現在は小田急8000形電車のシートを設置し、子ども向けに鉄道の制服を貸し出すなどグレードアップしている。

角部屋の窓から特急「あずさ」や小田急ロマンスカー「GSE」が見える(出典:小田急電鉄、報道資料

 10年には、南海なんば駅直上の「スイスホテル南海大阪」が「Trains!電車の見えるお部屋に泊まろう!」プランを発売。秋葉原ワシントンホテルもトレインビューとNゲージジオラマを備えた鉄道ルーム「クハネ1304」の提供を開始して話題になった。

 この頃からホテル側もトレインビューを意識し、11年に近鉄京都駅直上に「ホテル近鉄京都駅(現・都シティ 近鉄京都駅)」がオープンすると、近鉄電車・新幹線・JR在来線を一望にできるトレインビューが大きな話題になった。

 新築ホテルも線路側を潰さずに部屋をつくり、既存ホテルもトレインビューを勧める。このようなホテルが増えて、楽天トラベルのトレインビュー検索結果「133施設」となった。「線路際のうるさい部屋」も、「線路際で列車が見える」へ。物は言いよう。逆転の発想だ。

 鉄道好きの筆者の知人が小倉のビジネスホテルに泊まったら、窓の外に線路がたくさんあって大喜び。しかし、そこは有名な歓楽街「船頭町」の入口だった。知人は「旅行会社がオススメしにくいと言った理由はこれか」と驚いたようだけど、そんな穴場にもトレインビューホテルはある。

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