不人気部屋が人気部屋に! なぜ「トレインビュー」は広がったのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(6/8 ページ)

» 2022年05月07日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

便利なビジネスホテルが楽しい滞在型に

 私は常々、すぐれた商品の要素は「便利」か「楽しい」のどちらかに集約されると考えている。その判断基準で考えると、トレインビューホテルは「楽しい」カテゴリーだ。しかし、トレインビューホテルの立地はもともとビジネスホテル。ビジネスホテルのウリは「便利」だった。

 「駅に近い」「繁華街に近い」「値段が手頃」などの要素が重視された。それで十分だけれど、弱点としては「滞在型」の利用者を得にくい。用事が終わればすぐに帰ってしまう。1泊か、せいぜい2泊である。

 しかし、ここに「景色を楽しむ」という要素が加わるとどうなるか。利用者は寝るためだけではなく、日中もホテルで過ごしたいと思う。「ホテルで過ごしたい」という要素は本来、リゾートホテルや温泉旅館の要素である。「夜にチェックインして、翌日の朝出発」の利用者が「夜にチェックインして、翌日はトレインビューを楽しんで、もう1泊」になるかもしれない。私も時間が許せばそうする。一日中列車を眺めるかどうかはともかく、周辺の観光や食事を楽しむとしても、トレインビューは「プラス1泊」の動機になる。

 鉄道ファンにとって、トレインビューのビジネスホテルは滞在型リゾートになり得る。そこに気付けば、リゾートホテル並みの付加価値のアイデアはどんどん出てくる。鉄道にちなんだ食事を提供しよう。鉄道にちなんだグッズやおみやげを販売しよう。鉄道にちなんだ街歩きなど、オプショナルツアーを提供しよう。

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