「顧客をアッと言わせる」統合を唱えるMS

各種システムの統合という難問を解決するべく、Microsoftは統合支援のためのツールを提供開始した。スマートな統合で「顧客をアッと言わせなければならない」と同社の企業向けソフト責任者は語る。(IDG)

» 2004年07月14日 17時02分 公開
[IDG Japan]
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 カナダのトロントで開かれたMicrosoftのWorldwide Partner Conferenceに参加した同国のチャネルパートナーによると、同社は中小企業が最も厄介な問題――統合――に取り組む手助けをするために、大きく踏み出そうとしている。

 同社のコラボレーション関連技術を扱うインフォメーションワーカー部門のグループバイスプレジデント、ジェフ・レイクス氏は7月12日、基調講演の中で「Information Bridge Framework(IBF)」の提供開始を明らかにした。IBFは、パートナーや開発者が各種システムを統合する助けになると同社は期待している。レイクス氏の説明によると、IBFにはインフォメーションワーカーがMicrosoft Office環境で、異なる業務のシステムからデータを検索、アクセス、作業する手助けをするツールやコンポーネントが含まれている。

 「ユーザーを業務プロセスと業務アプリケーションシステムに接続すること、その業務を把握することが課題だ。顧客にとってはこれが苦痛なのだ」と同氏。

 例えば、ユーザーがOfficeで文書を作成しており、自社と顧客の関係についての情報をその中に幾らか盛り込みたいとか、もっと情報を見つけたいと思った場合、OfficeとCRMシステムを切り替えなくてはならないと同氏は語る。だがIBFを使えば、ユーザーがWord文書の中の人名をクリックすると、その顧客とのビジネス関係についての情報がポップアップで表示される、といったことが可能になる。

 「Officeユーザーがアプリケーションを切り替える代わりに、アプリケーションが文脈に応じて機能し、詳細情報を見たり、途中で検索を行ったりできる。サービスリクエストを観察してバックエンドシステムに接続し、そこから情報を(アプリケーションに)戻すことが可能だ」(レイクス氏)

 Microsoftの発表文によると、IBFのβ版には3000以上の独自のダウンロードコンポーネントがあり、50社を超えるパートナーと顧客が、それを利用してソリューションを開発、導入する方法を積極的に学んでいるという。

 Microsoft Business Solutions(MBS)部門上級副社長ダグ・バーガム氏も、ステージ上で統合について語った。MBSはMicrosoft CRMや、Great Plains、Solomon、Navision、Axaptaの下で提供されるERP製品などを包括するブランド。

 バーガム氏は、MBS部門の製品とほかのMicrosoft製品を統合するという目標達成に向けた進捗を概説した。Microsoftはパートナー(インテグレータと独立系ソフトベンダー(ISV)の両方を含む)とともに、「スマートな統合で顧客を『アッと言わせなければ』ならない」と同氏は語り、MBS製品とインフラプラットフォームを連係させる取り組みは「双方向的」であるべきだとも述べた。

 「異種混在環境にあまり関心のない」中小企業をターゲットにする際、Microsoft製品全体を深く統合することは特に賢明だと同氏。「こうした企業は、1社のベンダーと協力するのがいい」

 この日行われたチャネルパートナーとMicrosoft幹部のQ&Aセッションで、トロントのCGI Cropで統合技術管理を担当する上級副社長ゲリー・リバー氏は、国際種登録機構(ISIS)などCGIの一部顧客にとっては、効果的なデータ共有が難問だったと語った。ISISは600以上の動物園と水族館から成る組織で、70カ国の動物学者や獣医が参加。参加者の使う言語は40種に及ぶ。「彼らにはデータを効果的に共有するメカニズムがなかった」とリバー氏は説明した。

 CGIはISISの入札に参加し、.NET環境で「Zoological Information Management System(ZIMS)」として知られるようになったシステムを構築している。ZIMSは「すべてのピースを接続する。単一のアプリケーションですべてのユーザーが接続され」、動物の共有や動物園の間での移動、繁殖の機会などに関する情報にアクセスできるという。

 バンクーバーのMBSパートナー、RSC GroupのCOO(最高執行責任者)ブラッド・ブッシェル氏は、最近では顧客が経験する統合の難関の性質に「大きなシフト」があったとしている。RSCは北米の顧客にコンサルティングと実装サービスを提供している。「もはや、すべてをキャプチャしてトランザクションを実行すればいいというものではない。今は情報を引き出すことが重要だ。作業を行うことではなく、情報を引き出し、外部のソースからの情報を取り込むことが大事なのだ」

 ブッシェル氏はまた、企業が国中に複数の支所を構えている場合の統合の複雑さを強調し、「カナダは広い国だ。カバーすべき場所がたくさんある」と語った。RSCの顧客の1社である食品会社Sun Rich Fresh Foodsは、ブリティッシュコロンビア州リッチモンドとトロントにオフィスを置き、そのほか2カ所に工場を持っている。さらに同社は3つの異なる製品ラインを有している。

 Sun Rich Fresh Foodsは3カ所にそれぞれNavisionの発注処理・流通ソフトを導入するか、あるいはすべてをリッチモンドのサーバで集中管理して、1つのデータベースの情報にアクセスするかという選択に迫られた。RSCは、Windows Server 2003からNavisionまで完全に統合されたソリューションを推薦し、これはタイムリーで正確な情報アクセスという点でSun Rich Fresh Foodsにまったく違う世界をもたらしたとブッシェル氏。

 このほかのWorldwide Partner Conference関連ニュースとして、MicrosoftはISVをサポートし、ソフト開発者にWindows Server 2003、Office System、Visual Studios .NETなどMicrosoftのプラットフォーム技術を採用させるための新プログラムを幾つか発表した。

 その1つが「ISV Royalty Program」で、ISVが自社のアプリケーションにMicrosoftプラットフォームの主要な要素を埋め込むための統合的な手法を提供するとMicrosoftの発表文には記されている。

 同社はこのプログラムについて、顧客がISVのソリューションを導入するのに必要な技術コンポーネントすべてを確実に入手でき、別々に買わずに済むと説明している。

 ほかに「ISV Buddy Program」というプログラムもあり、これはISVとMicrosoft社員を引き合わせて、開発・営業・マーケティングのプロセスにおける技術サポートとリソースへのアクセスを拡大するという。これまでに約430社のISVがこのプログラムに参加し、800人以上のMicrosoft社員がバディとして登録している。

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