嵐にも負けない ── 熱心なユーザーで沸くiSeriesユーザーの年次総会iSUCレポート

滋賀・大津でiSeriesユーザーの年次総会、「iSUC」が開幕した。台風23号の直撃を食らったが、1000人を超える熱心なユーザーらが琵琶湖畔のホテルに詰め掛けた。

» 2004年10月21日 00時46分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 10月20日、滋賀県大津市でIBM eServer iSeriesユーザーの年次総会、「iSUC」(アイザック)が開幕した。関西地方は超大型の台風23号の直撃を食らい、九州や西日本からは移動の手段がなくなってしまったものの、1000人を超える熱心なユーザーらが琵琶湖畔のホテルに詰め掛けた。

超大型台風が襲う中、ホテルのボールルームでiSUCは開幕した

 iSUCは、iSeries(旧AS/400)の企業ユーザーが主体となり、スキルアップやユーザー同士の情報交換を目的に1990年から毎年行われ、今年で15回を数える。5月に新しいPower5プロセッサを搭載した「IBM eServer i5」シリーズが登場したこともあり、同プラットフォームの最新情報を伝えるセッションが目立つ。ちなみに日本アイ・ビー・エムはこの日、Power5/1.9GHzを最大で64ウェイまで拡張できるハイエンドモデルを11月19日に出荷開始することも明らかにしている。

 マーケティングメッセージが強く打ち出されるベンダー主催のカンファレンスと違い、基調講演にも「鳥人間コンテスト」に参加する日本大学理工学部航空研究会の安部建一顧問が登場し、「鳥のように大空を飛びたい」という夢に挑戦する学生たちの話をしている。

IBMへの期待

 「iSUC参加者の8割は私の顧客」と話すのは、日本IBMで中堅企業や小規模事業者を担当する堀田一芙常務。1月に就任以来、300人近い企業トップを訪問し、彼らが抱える経営上の課題やITシステムへの期待に耳を傾けたという。

1月から9月まで273人の企業トップを精力的に訪問した堀田氏。すべて新規というから驚く

 規模の大小を問わず、多くの企業が情報漏えい対策に追われている。堀田氏が訪問した企業経営者らのあいだでも、ITシステムへの関心がにわかに高まっているという。

 「彼らは社内のスタッフに対応させたいと考えているが、スキルのある人材がいないのが実情」と、堀田氏は中堅企業や小規模事業者に共通した悩みを紹介する。

 それでも最近、ある企業のトップは、「銀行とITベンダーは一流と付き合うことが必要」と、国産コンピュータベンダーのオフコンからiSeriesへのリプレースを決めてくれたという。その背景には、IBMによるコンサルティングを通じて触発され、中堅幹部が「将来の情報システムはこうあるべき」と自信を持って語れるようになったことがある。かつて銀行は企業の人材育成に一役買ったが、「顧客の成功」に対する支援を掲げるIBMにも、それに劣らない期待が寄せられている。

オープンを打ち出すiSeries

 「レガシー」のイメージを払拭し切れないiSeriesだが、Javaをいち早くサポートするなど、そのオープンスタンダードの取り込みは意外なほど進んでいる。開発が容易な固有のRPG言語に対する支持も根強く、顧客の満足度も高いが、堀田氏は「IBMは、顧客をRPGの世界に閉じ込めておくことを望んではいない。われわれのeServer戦略は、ミドルウェアを生かし、アプリケーションを統一していくことだ」と話す。

 他社ユーザーを果敢に攻めていくことも堀田氏が統括するゼネラルビジネス事業部門の課題だ。プロ野球新規参入で話題を振りまくライブドアや楽天も彼らの顧客だが、こうした企業を攻めるにはオープン標準のサポートが不可欠となる。実際、SPARC/SolarisサーバからeServer i5に切り替えたある新規ユーザーは強力なオープンプラットフォームとして期待しているという。

 IBMとしては、RPGに満足する既存ユーザーにも、新たな価値をもたらすオープン化への取り組みを促したいところ。今回、同社がiSUCを主催する全国IBMユーザー研究会連合会とiSUCシステムのJava化を進めるプロジェクトを立ち上げたのもそうした狙いがある。iSUCの運営を円滑に進めるために開発されてきた、ばらばらのアプリケーションをeServer i5(WebSphere、DB2、およびJava)で統合していくもので、来年のiSUC運営に役立てたいとしている。

 本格的にオープン化への取り組みを開始したiSUCは、22日まで行われる。

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