SNSやBlogもリッチになる。リーチで言うならLonghornは敵ではない――Macromedia CTOインタビューMacromedia Flash Conference 2004

リッチ・インターネット・アプリケーションを統合的に製作する環境であるMacromedia Flexが日本でも発表された。マクロメディアの真の狙い、そして業界に与えるインパクトを米国MacromediaのCTOに聞いた。

» 2004年11月01日 02時07分 公開
[大出裕之,ITmedia]

 Macromedia Flexの発表を受けて10月22日に開催されたMacromedia Conference 2004の報告はこちらを読んでいただくとして、別の日程で米MacromediaのCTOに話を聞く機会を得た。Macromedia Flexについての解説としてはこちらを参考にしていただきたい。本稿ではCTOへの質疑応答を中心に話を進める。

Macromedia・Executive Vice President & Chief Software ArchitectのKevin Lynch氏

Macromediaの既存製品との位置づけについて

――Macromedia Flexを導入した場合の基本的なメリットを教えてください。

Kevin Flexは、MXMLが構造の部分を定義していて、ActionScriptがインタラクションの部分を作っています。そのアクションが、Flexクラスライブラリをたたきます。このような手法により、アプリケーションのインプリメンテーションが短くて済むわけです。

――御社にはSWFファイルを作成できるアプリケーションがたくさんあります。またこれまでにも、通常のMacromedia Flashだけでなく、Macromedia Flash GeneraterやMacromedia Flash MX Professionalなど、サーバサイドに近い立場のソリューションを発表してきました。それらとMacromedia Flexとの違いを教えてください。

Kevin まずはMacromedia Flashとの違いから説明します。Flashはデザイナーのためのツールです。新しいインタフェースを創造するために使ってほしい。これに対しFlexは、デベロッパがアプリケーションを作るためのものです。デザイナーとデベロッパがFlashとFlexを使用することで、よりよいアプリ、リッチなユーザーインタフェースを作成できるようになります。

 もちろんFlexだけで作ることもできます。ですが、新しい体験、イノベーションはデザイナーが作るべきものだと思います。我々の仕事としては、次々と世の中に登場してくる新しいデザインの中で、共通化できるものがあれば、しっかりとFlexのクラスライブラリに追加していきたいですね。

 Flash Generatorとの違いですが、これはサーバサイドでグラフィックスをジェネレートしてダイナミックに送出する、ことが目的でした。ですがFlashプレーヤーの進化により、ダイナミックなジェネレートをサーバサイドでやる必要がなくなりました。それで発売を終了したわけです。

 そしてFlash MX Professionalとの違いですが、こちらはあくまでもデザイナー向けの製品です。Flashのユーザーには自分たちのことをデベロッパと呼ばれるかたがたがいらっしゃいます。つまり、リッチコンテンツのデベロッパということでしょうか。そのようなかたがたに向けたツールです。

――デベロッパがFlexを使用することで、ある程度デザイナーの代わりができてしまうのではないでしょうか?

Kevin (笑)そのとおりです。ですがそれはある程度であって、新しいものを作るという点において、デザイナーの仕事がなくなるわけではありません。

ライバルよりもより広いリーチにリッチなコンテンツを

――ではFlexが対象としているユーザーは?

Kevin JavaやASPと日々格闘されているデベロッパのかたがたです。ですのでライバルとしては、JSP、ASP、そしてhtmlでしょう。世の中の多くのインターネット・ユーザーインタフェースやインターネット・アプリケーションは、これらで書かれています。既存のアプリケーションで作成している環境そのものが、Flexのライバルと言えるでしょうね。

 我々としては、単なる開発環境だけではなく、実際に有効な実行環境の拡大にも力を入れてきました。つまり、Flashプレーヤーの普及という点です。これまでのFlashプレーヤーのバージョンは、発表後12カ月でワールドワイドでの普及率が80%を超えております。これほど新バージョンへの移行速度が速い実行環境はどこにも存在しません。

左はマクロメディア・取締役・CTOの田中章雄氏

――実行環境、あるいはインストールベースとして見れば、今後登場するWindowsの次期バージョンであるLonghorn、そしてその中のAvalonと呼ばれる実行環境とたびたび比較されるが?

Kevin Longhornは、マイクロソフトが提唱する次世代PCという高いスペックでの動作が前提となっています。今の現状からすると、グラフィックカードやCPUなどがハイエンドのマシンがターゲットとなっているのではないでしょうか。ですがネットにつながる普通のすべてのユーザーがその環境にすぐに移行するとは限りません。

 弊社は、当然Longhorn自体はサポートします。サーバ製品などもすぐに対応させます。ですが、我々はMac、Linux、Soraris、そして非PCデバイスをサポートすることにより、より広いかたがたへ対応していきます。さらにはFlashで作ったコンテンツが、将来のLonghorn時代においても過去の大物(Windows XP、Windows 98など)に対応できるような努力も続けていきます。

 具体的に弊社が何を目指しているかというと、表現力の高いリッチなコンテンツを、より広いリーチに届けていく、この両方なのです。

SNSやBlogももちろんリッチに

――リーチと言えば、日本でもSNSやBlogが流行してきています。これらはリッチなインターネット体験とはあまり言えないものだが、Macromediaとしてはこれらの流行をどうとらえていますか?

Kevin 我々はそれらのコンテンツをすべて否定しているわけではありません。新しいWebの表現が登場してきていることについては興味を持っています。

 それとは別に、リッチ・インターネット・アプリケーションの波も来ていると思います。新しいトレンドの中でも、今後リッチ・インターネット・アプリケーションが適しているものがあるのではないでしょうか。BlogやSNSの体験が、ブラウザの外でリッチになっていき、新しいアプリケーションになると思いました。

 私個人もSNSのヘビーユーザーなのですが(笑)、通常よくあるSNSのユーザーインタフェースは確かに面白いものではありません。実際米国では、既にリッチ化されたSNSがあります。

――Flexクラスライブラリへの追加は考えていらっしゃる?

Kevin SNSはまだですが、Blogリーダーは既に作っており、サンプルとして提供しています。これはブラウザのそとで、デスクトップ上でFlashアプリを動かすものです。現段階ではデベロッパリリースで、正式なものではありませんが。

 このBlogリーダーは、最近投稿されたものが自動的に右側に出るようになっており、ヘッドラインをカテゴリ別に表示することもできます。まだ実験的なものではありますがBlogの世界もリッチなインタフェースを持つことで、より使いやすくなるのではないでしょうか。

 ちなみにクラスライブラリの新規リリースは、1年で2回くらいを予定しています。ニーズがあるかどうかという視点で考えていますので、ニーズがあればすぐにでも出しますよ。

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