ZigBeeは日本の製造業を救う?寄稿後編(1/4 ページ)

ZigBeeを中心に近距離無線技術の持つ可能性を検討する。情報を現場をつなぐこと、そして、それによるプロセス・イノベーションの基礎となることが期待される。名古屋を基盤に近距離無線と組込みソフトウェアなどの企画、開発を行うOTSLに寄稿してもらう。

» 2004年12月02日 19時44分 公開
[波多野祥二、浅井龍男ほか,OTSL]

 ZigBeeを中心に近距離無線技術の持つ可能性を検討する。情報を現場をつなぐこと、そして、それによるプロセス・イノベーションの基礎となることが期待される。名古屋を基盤に近距離無線と組込みソフトウェアなどの企画、開発を行うOTSLに寄稿してもらう。

ZigBeeの特徴

 前編では、近距離無線技術について、伝送路、ネットワーク・トポロジー、固体情報、位置情報などの基本的な特性や機能を取り上げた。後編では、ZigBeeを中心に近距離無線技術の持つ可能性を検討する。

 ZigBeeの場合もまた然りなのだが、近距離無線への素朴な期待は、ワイヤー/ケーブルを置き換えることある。これにより近距離無線のプロトコルは、まず伝送路としての特性を問われることになる。近距離無線の場合、伝送路の物理層およびMAC副層の仕様を規定しているものとして、IEEE 802.11系や802.15系が知られている。

 ZigBeeは、その中でもIEEE802.15.4をベースとするソフトウェア層として仕様の開発が行われている。IEEE802.15.4は、通信速度面では必ずしも速いとは言えないが、消費電力に関しては極めて低いことが特徴として挙げられる。ただし、通信速度が遅いと言っても、伝送速度は250Kbpsあり、キャラクタ・データの伝送には十分だ。高品質とはいかないながらも、音の伝送も視野に入れることができる。伝送距離は、10〜100メートル。これは、同程度の速度の有線よりも、メンテナンス費用も含めたコスト面および柔軟性において優れていると言える。

 しかし、物理層とMAC層の下位部分を規定しているIEEE802.15.4も、それを制御するソフトウェアがあって初めて能力を発揮できる。つまり、どのようなネットワーク・トポロジーをサポートしているのか、電力消費をどのようにコントロールするのかなどといった上位レベルの仕様は、ZigBeeのようなソフトウェア・スタックで具体的に規定されることで、目的に応じた機能を提供できるようになる。

 前編でも述べたが、ZigBeeの特徴は、メッシュ型のネットワーク・トポロジーをサポートしていることであり、これにより、芋ずる式の広がりを持つ大規模で堅牢なネットワークの提供が可能となっている。これが持つ意味は重要だ。たとえば、街区全体の照明効果のコントロールや、高層ビル全域にわたる照明/空調制御などの環境を、従来にない柔軟さで構築することも可能だ。

 ここで、RFIDとZiBeeを比較してみる。RFIDは、リーダ/ライタをマスターとするスター型ネットワークのみを提供している。このタイプのネットワークは、ホスト・コンピュータ側から見ると有線無線の差はあっても、低速な外部バスに接続された入力デバイスとして扱う範囲のものだ。つまり、膨大な生データのデータクレンジングや、リアルタイムでの処理など、CPUやデータベース・システムにかかる負荷は大きくても、ホスト集中傾向を強めつつある既存ITベンダーの戦略との整合性は高いと言える。

 これに対し、ZigBeeは、アドホックな分散型ネットワークを前提とするアプリケーション基盤を提供しており、既存アーキテクチャからは半ば独立した存在と考えていい。このことは、ZigBee Alliance(http://www.zigbee.org/)の顔ぶれに、いわゆるコンピュータ・ベンダーが見当たらないことでも確認できるはずだ。

 扱えるノード数の多さも、ZigBeeの特徴のひとつと言える。ZigBeeでは、約6万ノードにIDを振って管理することが可能だ。たとえばBluetoothのように、7個程度のノードしか管理できないPAN(Personal Area Network)の場合、ネットワークと言ってもケーブルの置き換えくらいしかメリットが見えてこないかもしれない。

 だが、6万個のノードからなるPANで、しかもメッシュ型ネットワークが実現できるとなれば、分散協調型動作アプリケーションや次世代の生産支援システムなどのアイデアも膨らませやすい。6万個のIDを管理できることは、倉庫やビル、工場構内などの設備や高額製品、高付加価値部品など、ICタグのような廉価さが必須とはならないプライベートな環境における個体情報の管理には、十分な能力と言える。

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