ZigBeeは日本の製造業を救う?寄稿後編(2/4 ページ)

» 2004年12月02日 19時44分 公開
[波多野祥二、浅井龍男ほか,OTSL]

位置情報機能

 次に紹介する位置情報機能は、ある無線ノードがどの位置にあるかを特定する技術だ。古くはPHSを使ったシステムから、最近では無線LANやBluetoothを使ったものまで、さまざまなシステムが提案されている。そういう意味では、位置情報機能はZigBeeに固有の特徴ではないが、ZigBeeによるアプリケーション・イメージには欠かせないもののひとつと言えるので概要について触れておきたい。

 無線ノードの位置を特定する方法は幾つか存在する。最も単純なものは、空間をいくつかの領域(セル)に分割し、無線ノードがどのセルに存在するかを探知する方法だ。PHSによる位置情報や、砂漠に無線ノードをばら撒いて物資の位置を把握するといった方式はこのアイデアを基にしている。

 また、2点以上の観測点で計測した電波の到着時間の差により位置を割り出す方法もある。これは、高い精度の測位を可能にしている半面、機材が数千万円するなど費用面でのハードルが高い。

 さらに、2点以上の計測地点で読み取った電波強度の差から位置を特定する方法もある。メートル単位の精度で位置を特定することで十分な場合は、この方法によりコスト効率の良い位置情報システムを実現できる。

 ただし、電波の減衰率は周辺の環境に左右され易いため、現場の状況に応じた補正を行うことが必須になる。ZigBeeはこれらすべての手法の基盤として十分な機能を持っている。しかし、コストの低さがZigBeeの特長である点を考えると、最初に紹介したセル方式か、3番目の電波強度の差によるものが現実的な選択肢になるはずだ。

ZigBeeの特長を生かしたアプリケーション

 ここまでZigBeeの特徴について説明をしてきた。さらに、アプリケーション開発者にとって重要になる特徴を紹介する。それは、ZigBeeがどのような用途でどのようなインタフェースを持つべきかを規定する「プロファイル」の扱いだ。

 プロファイルの作成はアプリケーション開発者が行うのがZigBeeの基本的な立場だ。ZigBee Allianceでは、たとえばホーム・ライティングなどの分野に向けて、基本的なプロファイルを作成したりしている。しかし、Allianceが策定したもの以外を排除するという姿勢はとっていない。

 つまり、アプリケーション開発者からみれば自由にアプリケーション・イメージを膨らませることができるのがZigBeeなのである。ZigBee Alliance自身はターゲットのアプリケーション領域を、ホーム・ライティング(家庭の照明管理)、ビルディングのライティング、産業用制御システム、などとしている。

 これらは、照度や温度、圧力など各種センサーが収集したデータを無線ノードのID、時刻、位置情報などと共に、適切なコンテクスト(文脈)で解釈し、制御命令を無線ネットワークで特定のアクチュエータやオペレーターに送るという共通した振る舞いを持っている。

 これらは、従来からセンサーネットワークとして議論されてきたものに相当する。センサーネットワーク自体の説明に関しては、たとえば総務省資料などに譲る。ここでは、センサーノード間の対等な通信やセンサー群のダイナミックなクラスタリング、コンテクストに沿った解釈、エンド・エンドの制御命令の伝達などの自律型センサーネットワークに求められる要件とされているものと、ZigBeeの特徴は、相性がいい点を指摘しておく。

日本の製造業への応用

 ここからは、ZigBeeやその上に構築できるセンサーネットワークが、実際にどのような可能性を提供できるのかについて検討する。そのために、最近盛んに議論され始めている日本型の製造モデルを材料として扱う。次の図は、マイケル・ポーター教授によるバリューチェーンの図だ。

図-1:バリューチェーン概念図(出典『競争優位の戦略』1985年 ダイヤモンド社)

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