ZigBeeは日本の製造業を救う?寄稿後編(4/4 ページ)

» 2004年12月02日 19時44分 公開
[波多野祥二、浅井龍男ほか,OTSL]
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 問題は、それぞれの立場でビジネスを推進するための条件が異なっており、1社だけでは市場を立ち上げることが困難な点である(図-4)。日本でもZigBeeに関する共同マーケティングを行う場を準備することで、この問題を解決する必要がある。

 さらに、相互運用性の確保もビジネス構造を構築する上で欠かせない要件になる。ZigBee Allianceから、認証基準や認証に必要なテスト内容や手順に関する方針がなかなか示されないのが現状ではあるが、ZigBeeが広範な支持を得るためには、認証のために何が必要か、そして、どの程度の費用がかかるかに依存する。

 この問題も、やはり個々の企業の利害よりも、市場の形成が優先されるべきことになる。「技適」と呼ばれる電波法上の規制への対処も、ZigBeeの普及のためには不可欠だ。技適の対象となる製品レベルの設定、必要な情報の選定は、現在議論中であるが、その結果次第で製品化に必要なコストが大きく変る可能性がある。この点も注目される。

図-4. ZigBeeのビジネス構造

最後に

 日本企業の持つ強みは現場力にあると言われる。実際に、近距離無線技術を現場の力をさらに進化させるものとして理解したとき、ユーザー企業から湧き出てくるシステムイメージは驚くほど豊かだ。

 本編で触れたメッシュ型センサーネットワークは、生産現場における状況の監視と自律的制御の構成要素になり得るであろうし、適切な距離感と精度を持つ位置情報システムと個体認識機能を組み合わせたガイダンス環境は、生産技能の底上げを実現できそうだ。

 それは、現場の「Measure & Manage(計測と管理)」に関する能力を向上させるだけではなく、「Sense & Respond(感じとり反応する)」機能により現場の人間の能力を最大化する方向性を持つ動きだと見ることもできるだろう。

もとより、解決すべきことは多数存在している。しかし、だれがどのように利用するのかを現場の状況に即してイメージし、長期の使用に耐えるアーキテクチャを構想することが、近距離無線技術の明日のために必要であるとわれわれは考えている。


著者紹介:OTSL代表取締役社長 波多野祥二、浅井龍男、水越剛成、水野将樹、水口敏春。OTSLは2003年4月に設立。近距離無線と組込みソフトウェアなどの企画、開発、販売、コンサルティング、教育サービスを提供する。オブジェクト指向技術、分散処理系および組込み系システムの開発経験者が多く在籍している。ZigBee Alliance、JASPARのメンバー。ZigBeeのソフトウェア・スタック(Z-stack)を販売。なお、著者の1人、浅井龍男氏はガートナー・ジャパンの元アナリストとして知られている。



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