ZigBeeに分裂の危機?

» 2004年10月07日 16時27分 公開
[IDG Japan]
IDG

 市場調査会社によると、省電力の無線技術「ZigBee」は、分裂の危機に瀕している。Wi-FiやWiMAXなどの標準ベースの仕様では、これまでこうした危険は回避されてきた。

 ZigBeeと同じ標準(IEEE 802.15.4)をベースにしたプロプライエタリ製品が急速に広まっており、5年のうちにZigBeeが802.15.4市場に占める割合はわずか10%程度になるだろう――West Technology Research Solutions(WTRS)が先週発表した調査報告書にはこう記されている。

 その一方で、Microsoftの共同創設者ポール・アレン氏をはじめとする投資家たちは、ZigBeeを推進する主要企業の1社であるEmberに数百万ポンドを投資している。

 Wi-Fiと同様に、ZigBeeはIEEE規格をベースにした相互運用性を備えた仕様だ。だが例えば802.11b/g製品はほとんどがWi-Fi仕様に準拠しているが、ZigBeeには同じことが当てはまらない。同技術の仕様は年内には完成しない見込みだ。その間にも、メーカー各社は既に、昨年承認された802.15.4をベースにしたプロプライエタリな製品を投入している。

 ZigBeeは家電や工業オートメーション、ビルのセキュリティなど、マイクロコントローラが搭載されているが、ネットワーク対応でない多数のデバイスを接続するための技術。データ転送速度は低いが、消費電力は極めて低いため、バッテリーが長期間持続する。

 802.11gも仕様完成前に似たような問題の影響を受けたが、これまでのところメーカー各社がWi-Fiの互換性確保を約束しているため、深刻な分裂には至っていない。だがZigBeeの場合は違う。「この業界では、市場が分断されるリスクが高く、802.15.4規格をベースにした各社のプロプライエタリなソリューションが市場の大勢を占める可能性がある」とWTRSは報告書で述べている。

 ベンダーがプロプライエタリな策を取っていることから、WTRSはZigBeeが802.15.4市場に占めるシェアの予測値を、前回の報告書から引き下げた。同社は、ZigBeeチップセットの出荷量は、2006年に802.15.4市場の19.7%に当たる1900万個に達し、2009年には市場の10.2%の1億2300万個に拡大すると予測している。

 「低速データ転送ネットワーク環境の標準になるどころか、ZigBeeはたくさんのプロプライエタリな選択肢の中の1つになる危険がある。ZigBee標準の登場前にプロプライエタリな802.15.4ソリューションが増加していることで、ZigBeeの市場機会が取り残されている」とWTRSの主席アナリスト、キルステン・ウェスト氏は述べている。

 ほかのアナリストは、ZigBeeの見通しについてもっと強気な見解を持っている。ABI Researchでは、2006年のZigBeeチップセット出荷量を8000万個と予測し、その主な理由として、ホームネットワーキング市場に大きな可能性があり、やがて産業市場も成長する点を挙げている。

 投資家たちはZigBeeの分裂を恐れていないようだ。10月1日には、ポール・アレン氏のVulcan Capitalが先頭に立ってEmberに2500万ドルを投資した。EmberはZigBeeの主要な支持者の1つであり、Emberによると、ZigBee Allianceでは同社のチップアーキテクチャーを使って仕様の相互運用性をテストしている。

 Emberが最新の投資ラウンドで獲得した新たな投資家は、ChevronTexaco Technology Ventures、日立、WestAMなど。既存の投資家Polaris Venture Partners、DFJ New England、GrandBanks Capital、RRE Ventures、DFJ ePlanet Venturesも投資し、Emberは合計で5300万ドルを調達した。

 Emberは10月1日、イーサネットの発明者で3Com創設者のボブ・メトカーフ氏が同社の会長に就任したことを発表した。メトカーフ氏は発表文で次のように述べている。「イーサネットは多数のコンピュータをつないできた。Emberの技術は、これまで通信できなかった無数のデバイスをネットワーク化する可能性を持っている。同社の初期のZigBeeへの取り組みは、市場で同社の無線メッシュネットワークソリューションの採用をさらに加速させるだろう」

 このほか分裂の危機にある無線ネットワーキングプロトコルには、100Mbpsを超える通信速度を実現するWi-Fi規格802.11nと、802.15.3a UltraWideBandベースの短距離・高速通信規格などがある。

Copyright(C) IDG Japan, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年07月27日 更新
  1. 小型スマホを使っている理由は? 選択肢のなさを嘆く声も:読者アンケート結果発表 (2024年07月26日)
  2. 「ハンディファン」「ネッククーラー」の選び方とやってはいけないこと 炎天下での利用は要注意 (2024年07月23日)
  3. IIJ×OPPO、Xiaomi、モトローラが語るスマホ戦術 おサイフケータイは「永遠の悩み」、IIJmioは「モバイル業界の宝石箱」 (2024年07月26日)
  4. 貼らない保護フィルムケース「スマハラ」、iPhone 15シリーズ向けに発売 丸洗いもOK (2024年07月26日)
  5. スマホの充電でやってはいけないこと 夏に気を付けたいNG行為は? (2024年07月26日)
  6. 約2万円の折りたたみケータイ「Orbic JOURNEY Pro 4G」を試す シンプルで使いやすいがローカライズに課題も (2024年07月27日)
  7. OPPOがFindシリーズを2024年内に国内発売へ 競合メーカー担当者の前でサプライズ告知 (2024年07月26日)
  8. 外出先から自宅のエアコンを遠隔操作、部屋を先に涼しくして“真夏の天国”を作っておく方法 (2024年07月25日)
  9. KDDIは通信障害をどのように検知してインフラを守っているのか ネットワークセンターに潜入 (2024年07月24日)
  10. 中国の“音楽特化スマホ”「MOONDROP MIAD01」を試す 重厚なサウンドに驚き、作り手のエゴを存分に感じた (2024年07月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー