Microsoftと親しくなったSun、その変化とは?(1/2 ページ)

Microsoftとの「歴史的和解」から1年近くが経った。Sunの社内で根本的な変化が生じるのは、これからかもしれない。

» 2005年04月04日 21時40分 公開
[IDG Japan]
IDG

 ベン・レネール氏のアドレス帳には、180人以上のMicrosoftの従業員の連絡先情報が記載されている。

 これだけ見れば大したことではなさそうに思えるかもしれないが、レネール氏はSun Microsystemsの従業員なのである。1年前までは、長期に及んだ両社間の争いのせいで両社の従業員同士のコミュニケーションはほとんど不可能で、レネール氏のようにSunの従業員が分厚いMicrosoft連絡リストを持っていることなど考えられなかったのである。

 Microsoftとの協力関係を管理するSunの企業開発ディレクターであるレネール氏は、「両社は血みどろの競争をしていて、意見が一致する部分は1つもないというような雰囲気だった」と振り返る。

 「われわれはMicrosoftのプロトコルや技術からシャットアウトされているような状態だった。それらの大部分をリバースエンジニアや推測によって解析しなければならなかった」と同氏。

 両ライバル間の緊張緩和により、Sunの技術者は自社のソフトウェアとWindowsシステムの相互運用性を実現しやすくなるかもしれないが、提携後の最初の1年は、Sunの製品ラインに根本的な変化をもたらさなかった。しかしSunでは現在、社内改革が進行中だ。同社はこの数年間、予想外の方向転換を図る癖がついたようだ。

 カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を構えるサーバベンダーのSunは、自社の主力製品であるSPARC搭載システムの開発の多くの部分を富士通にゆだねようとしている。そしてSunは今、Intelのx86命令セット(伝統的にMicrosoftのWindows OSと結びついてきたプラットフォーム)をベースとする次世代のサーバデザインに社運を賭けようとしている。

MicrosoftのOEMパートナーに?

 SunとMicrosoftの提携2年目には、1年目よりも大きな根本的変化が訪れることが予想される。その理由は幾つかある。

 両社の従業員によると、製品ポートフォリオを見るだけではよく分からないかもしれないが、和解の成果ははっきりと感じられるという。

 Microsoftのエンタープライズ技術センターの開発マネジャー、ブライス・ミルトン氏は最近のブログに、「現場レベルから見れば、SunとMicrosoftの提携は、単に両社に都合の良い法的術策だけではない実質的なものであるように思える」と記している。

 ミルトン氏のグループには最近、100万ドル相当のSunのx86ハードウェアが納入された。Sunのシステム上でアプリケーションをテストする顧客を支援するのが購入の目的だ。

 MicrosoftとSunの法的紛争は両社の間に大きな壁を築いた。Sunの従業員によると、7年間にわたる係争は次第に泥沼化し、両社間の対話はすべて召喚状発行のきっかけになるのではと思えるような状態だったという。

 Sunの従業員(匿名希望)は、「相互の不信感は頂点に達していた。われわれの法務顧問から、Microsoftの社員とは話をしないように言われていた。証拠開示申請の口実を相手に与えかねないというのが理由だ」と話している。

 昨年、訴訟の和解が発表されたことにより、対話を阻んでいた壁が取り除かれたのみならず、かつての敵同士がある意味で盟友となった。MicrosoftとSunは10年間の技術提携契約を結ぶとともに、両社首脳の定期的会合のスケジュールを直ちに策定した(関連記事)

 レネール氏によると、Microsoftの会長兼チーフソフトウェアアーキテクトのビル・ゲイツ氏とSunの執行副社長兼最高技術責任者のグレッグ・パパドプロス氏は現在、約2カ月に一度の割合で直接会っているほか、2週間に一度、電話で話しているらしい。また、両社のスコット・マクニーリーCEOとスティーブ・バルマーCEOも2カ月に一度、定期的に電話で話しているという(関連記事)

 観測筋では、この緊密な関係は少なくとも、今後の重要な変化への扉を開くものだとみている。

 こういった変化の中で特に注目されるのは、Sunがサーバ分野のライバル各社に倣って、MicrosoftのWindows OSベースのシステムの販売をついに開始する可能性があることだ。

 訴訟が和解する前から、Sunは自社のx86ハードウェア上でWindowsの動作の認定作業を開始していた。同社は既に、Red Hat版およびNovell版のLinux OSを搭載したシステムを販売している。x86ビジネスの構築を目指すSunにとって、MicrosoftとのOEM(相手先ブランドによる生産)関係は次の必然的ステップになるだろうとの指摘もある。

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