SAPジャパン、mySAP All-in-Oneの支援ツール「SAP Best Practices」提供開始

SAPジャパンは6月9日、中堅市場向けのSAP導入プログラムである「mySAP All-in-One」の支援ツールとして「SAP Best Practices」を国内でも提供開始することを明らかにした。

» 2005年06月09日 18時46分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「シンプルだが、奥が深い」──SAPジャパンでソリューション統括本部長を務める玉木一郎バイスプレジデントは「SAP Best Practices」の国内発表を自らこう評した。

 SAPジャパンは6月9日、中堅市場向けのSAP導入プログラムである「mySAP All-in-One」の支援ツールとして「SAP Best Practices」を国内でも提供開始することを明らかにした。SAP Best Practicesを使うことによって、ITの専門知識を必要した煩雑なパラメーター設定を自動化でき、SAP製品の導入プロセスは飛躍的に短縮できるという。

 「業務の視点でシナリオを作成していけば、それを実現する機能群も自動選択され、一連の設定作業も自動化される。中堅企業ほどITの専門家が不足しており、こうした自動化のニーズは高い。当面、中堅企業が導入する際には3〜4割がSAP Best Practicesを利用するのではないかと期待している」(玉木氏)

 2003年2月に国内でもスタートしたmySAP All-in-Oneプログラムは、SAPによるコアアプリケーションに加え、SAP導入に豊富な経験を持つパートナーらが開発した業種別のソリューションテンプレートをパッケージ化し、価格モデルと併せて提供するもの。トータルコストが不透明になりがちなパッケージ導入サービスに、価格モデルの考え方を用いることで、ハードウェア、SAPライセンス、導入コンサル、開発費用を含むプロジェクトの総額を顧客企業が大まかに予測できることが特徴となっている。

 SAP Best Practicesは、こうしたテンプレートによる導入プロセスをある程度置き換えるものだが、SAPジャパンでは自動化してそのまま利用できるのは7〜8割程度とみており、顧客固有の仕様に変える作業は残る。

 むしろ、「パートナーの付加価値は、業種ごとの導入経験を生かし、企業を成功に導くことに移っていく」と玉木氏はみる。

 今回提供が始まったのはR/3 Enterprise向けの16業種対応のBest Practicesだが、7月26日にはmySAP ERP 2004版およびCRM 4.0向けも提供される。他業種への対応拡大も順次行われるという。SAPと契約している顧客やパートナーには無償提供される。

戦略分野はESAで柔軟に

 Best PracticesはERPの導入プロセスを自動化していくもので、いわばバックオフィスが主体となっている。一方、SAPでは2003年にESA(エンタープライズサービスアーキテクチャー)構想を掲げ、ビジネス環境の変化に応じ、迅速にビジネスプロセスを組み替えられる仕組みづくりに取り組んできた。年内にはmySAP Business Suiteのすべての製品がSAP NetWeaver対応を済ませるという。

 SAPはまた今年初め、コンポジッションプラットフォームとして技術的に実証されたNetWeaverをさらに一歩進め、ビジネスプロセスのためのプラットフォームとして進化させることを明らかにした。4月には「Business Process Platform」のプレビュー版がリリースされ、5月中旬のSAPPHIRE '05 Bostonではヘニング・カガーマン会長兼CEOが、「次の5年を勝ち抜くにはビジネスプロセスの革新が不可欠」とし、SAP NetWeaverの進化形であるBusiness Process Platformを売り込んでいる。

 Business Process Platformのプレビュー版では、500のエンタープライズサービスがライブラリとして提供され、これらの「エンタープライズサービス」は、単なるWebサービスとは異なり、ビジネスの言葉で理解できるのが特徴だという。

 こうした2つの動きを見ていると、SAP Best Practicesによってバックオフィス分野の導入自動化を進め、戦略的な分野はSOA(サービス指向アーキテクチャー)によって柔軟に組み替えていくというSAPの考え方が読み取れるだろう。もちろん、中堅および中小企業においては、「先ずはERP」というニーズが強く、SAPとしては業務シナリオベースの導入自動化を強力に推し進めるわけだ。

 「コンシューマー向けのパッケージであれば、ユーザーは“使う”ということによりフォーカスできている。エンタープライズ向けのパッケージもそういう世界になる」(玉木氏)

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