オープンソース版ゴースト・ストーリー(1/2 ページ)

話は、Linux版Norton Ghostとも言うべきユーティリティg4lのレビューに端を発する。だが、このレビューの結論が問題なのではない。これからお話しするのは、2つのオープンソース・ゴーストg4uとg4lを巡る物語なのだ。

» 2005年08月30日 00時17分 公開
[Joe-Barr,japan.linux.com]

 話は、Linux版Norton Ghostとも言うべきユーティリティg4lのレビューに端を発する。だが、このレビューの結論が問題なのではない。これからお話しするのは、2つのオープンソース・ゴーストg4uとg4lを巡る物語なのだ。ゴースト・ストーリーは、やがて、恐怖よりも愁嘆の色を濃くしていく。己の出自を拒絶し親子の反目を招いた非嫡出子の物語――。少し先走りすぎたようだ。始めから順を追ってお話ししよう。

 Hubert Feyrer氏がg4uを書いたのは、6年ほど前のことである。NetBSDベースのブート・フロッピーディスクで、広く使われていたNorton Ghostと類似の機能を持っている。g4uという名称は「Ghost for Unix」を短縮したものだ。

 同氏は今、博士論文に取り組んでいるため時間がなく、このプロジェクトは中断状態になっている。しかし、g4uはFeyrerのWebサイトからダウンロード可能だ。このサイトからCD ISOバージョンをダウンロードして試用してみたが、問題なく動いた。同じドライブ上のLinuxのパーティション(hda1、hda2、hda3)がコピーされ、しばらくするとローカル・パーティションの複製が完了した。ただし、ドライブ名はBSD流である。

 また、ドライブ全体を複製することもできる。FTPサーバにドライブを丸ごとバックアップし、そのサーバからドライブを復元できるのである。総じて、g4uは非常に有用なツールと言えよう。しかも、NetBSDを起動してその下で動作するが、Windowsを始めとしてOS/2やLinuxに至るまで、ドライブやパーティションがどのようなオペレーティング・システムのものであろうと機能する。

 ユーザー・インタフェースは伝統的なコマンドラインで、洒落たGUIなどはなく、DOS風のカラフルなメニューさえもない。飾り気がなく見栄えもしないが、g4uは確かに機能する。Feyrer氏はBSDライセンスを付けて、フリーソフトウェアの世界にこの作品を贈った。BSDライセンスで作者の手元に残るのは、原作者としてのその名だけである。

 そして歳月は流れ、g4lが登場する。

 昨年の初め、freshmeatにGhost for Linuxというプロジェクトが登場した。そのg4lの初期バージョンはg4uと酷似していたが、原作者としてHubert Feyrer氏の名を挙げることもなく、g4uのGPLライセンスLinuxバージョンともされていなかった。

 この2つのソフトウェアの類似性はあまりにも顕著で、g4uの作者Feyrer氏をして、g4lがg4uを基に作られたことを示すためにコードの比較対照を行わしめたほどである。

 g4lの作者――nmeとしかわからない――にとって、この分析はよほど腹に据えかねたもののようで、次のように言い残してプロジェクトから手を引いてしまった。「Feyrer氏は、今度は、わたしの書いたコードにFeyrer氏のライセンスとクレジットを表示しろと法的に要求しようと考えているようだ。これはわたしには受け入れがたく、したがってg4lの仕事はもうしないことにした。一部の人たちのせいで、プログラミングはさして面白いものではなくなってしまった」

 nmeは去ったが、プロジェクト自体がなくなることはなかった。このプロジェクトは、オープンソース・プロジェクトなのである。Frank Stephen氏が名乗り出て、nmeに代わって管理者となった。

 これはg4uとg4lの対立を解消する絶好の機会となるはずだったが、そうはならなかった。新しい管理者Stephen氏も――あらゆる証拠に反して――オリジナルのプロジェクトはg4uに基づいて作られたものではないと主張し、固執したのである。その上、コードは今では当初のものとは大きく異なっており、問題は「過去のこと」だと述べている。

 Linux/フリーソフトウェアの支持者として名高いRick Moen氏は、Frank Stephen氏はnmeの別名ではないかとさえ疑う。それが事実かどうかはともあれ、この2人がFeyrer氏とg4uに対して当然払うべき敬意にある種の嫌悪感を共有しているのは確かである。Moen氏は、freshmeat上にあるこのプロジェクトのページに、次のようなコメントを載せている。

巷間を賑わしているこの件について、わたしは第三者であり、ただただLinuxコミュニティが健全であれかしと願う者として心配しているだけであることを始めに申し上げておきたい。わたしが思うに、v0.12は明らかにHubert Feyrer氏の作品をコピーしたものであり、原作者Feyrer氏のクレジットを掲げていないのは不法かつ不誠実である。あなたはそうではないと主張するが、この点については極めて明白だとわたしは考える。(その主張に反して、変更は十分なものではないだろう。g4lのGPLはFeyrer氏が採用した旧BSDライセンスの広告条項と抵触するからだ。この問題を回避するため、g4lはライセンスの例外を宣言すべきだろう。さらに、g4lに組み込まれたFeyrer氏の作品については、GPLではなく、Feyrer氏の条項が適用されることを明確にすべきだろう。)

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