特集
» 2005年11月01日 00時00分 UPDATE

作業現場にロボットを派遣せよ――人間型ロボット「HRP-3P」

ロボットが作業現場で働く――そんな光景はアニメでしかあり得ないという考えはもはや過去のものになりつつある。悪環境、過酷環境での実用化も見えてきたようだ。

[早川みどり,ITmedia]

 ロボットは機械だから水や埃には弱い、というイメージがある。しかし、そういった常識を払拭し、実際の作業現場で使えるロボットを目指し、川田工業、産業技術総合研究所(産総研)、川崎重工の3社が共同で開発したロボットが「HRP-3P」だ。HRPとは「人間協調・共存型ロボットシステムプロジェクト」の略である。このプロジェクトは独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(略称「NEDO」)が、実際の環境で働くロボットを開発する目的で立ち上げたものだ。その依頼を受け、川田工業、産総研、川崎重工が共同開発を行っている。

HRP-3P マッスル・ポーズをきめるHRP-3P。体のバランスが良く、関節が複雑に設計してあるのが見て取れる

 身長160cm、体重65kg(バッテリーを含む)と、通常の人間とあまり変わらない大きさ、重さのこのロボットは、関節の自由度(動く方向の数)が多く、作業用ロボットとして複雑な作業にも対応できる上に、屋外での作業を可能にするために、水や埃が進入しやすい関節部分と、体内の熱を排出する部分に防塵・防滴機能を搭載しているのだ。最終的には、人間にとってつらい悪環境、過酷環境での実用化を目指している。

dripproof_s.jpg 「やれやれ、降られちまった」と言わんばかりのポーズが可愛い、防滴テスト中のHRP-3P。水のかかる作業にも対応可能

 ロボットがどれだけ複雑な動作ができるかは、その関節の自由度にかかっている。歩行のための足より、物をつかむ手の関節がどのくらいあるか。その点、HRP-3Pの関節は人間に近づきつつある。特に手首と肩の作りは注目したい。手首が回ることに加え、4方向に動くように設計されている。肩も前後左右はもちろん、腕を回転させる動きができる。指はまだグローブをはめたように親指だけしか独立してはいないが、われわれがする手首や腕の動きはほとんど行えるのだ。もちろん、物をつかむときの握力調整もできる。

dripproof_outside.jpg 屋外での防塵・防滴実験の様子。腕や肩の関節の作りがよく見える。人間に近い動きができるよう設計に工夫が加えられている

 二足歩行のロボットは、ただでさえバランスを取るのが大変だ。ところがHRP-3Pは、足場の悪いところでも腕と脚で自らバランスを取ることができる。さらに、氷やガラスのような滑りやすい場所でも、スリップ検出技術を搭載したことで自らバランスを取りながら歩くことができる。

 スリップしやすい場所を歩かせるとHRP-3Pは、人間と同じようにゆっくりと足場を確かめるように歩く。その姿は、あまりに人間に似ていてユーモラスですらある。まるで、雪道を歩く人間の姿だ。自立型二足歩行ロボットには、体重移動をコントロールしたりと、人間の歩き方に近い技術が活用されているのだ。

cockpit_s.jpg 人間が遠隔操作するためのコックピット。離れた安全な場所から作業の指示を送ることができる

 転ばないようバランスを取るなどの通常の動作は、HRP-3P自身が自分で判断して動くことができる自律機能だが、具体的な作業の指示は、人間がコックピットから送る。人間は、離れた場所から操作することで、安全に細かい作業の指示をすることが可能となっているのだ。HRP-3Pは体のバランスを取るなどの無意識動作は自律機能で、作業の指示は遠隔操作機能で行う、自律・遠隔ハイブリット型のロボットなのだ。

 さらに、作業の指示がスムーズにできるよう、制御用距離認識カメラシステムと、遠隔操作用カメラの両方を搭載している。操作する人間は、HRP-3Pの「目」を通して物を見ながら指示を送ることができるのだ。

 HRP-3Pはまだまだプロトタイプだが、世界に先駆けて製作・発表された。今後は産業用ロボット、さらには家事用ロボットの開発・実用化を目指している。あなたの生活環境にロボットがやってくるのも、そう遠い未来のことではなさそうだ。

資料提供:川田工業、産業技術総合研究所、川崎重工業

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -