OpenOfficeの課題、MS Office互換と独自性バランス月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――11月号(1/2 ページ)

2.0の日本語版がリリースされ、OpenOffice.orgは本領を発揮する土壌が整った。企業を中心とするオフィススイートの見直しに、いま本当に必要なものは何なのか? 考える時期が来たようだ。

» 2005年11月14日 15時06分 公開
[可知 豊,ITmedia]

 ついにバージョンOpenOffice.org 2.0の日本語版がリリースされました。開発に関わった皆さん、お疲れさまでした。リリースに際してご協力いただいたみなさん、ありがとうございます。そして正式リリースを待っていたユーザーの方々、お待たせしました。OpenOffice.org 2.0がお役に立つことを願っています。

OpenOffice.orgプロジェクトが5周年

 OpenOffice.orgプロジェクトは、10月13日で5周年を迎えました。毎年、1年前とは状況が変わっており、一段とおもしろいことができるようになっていると思います。それでもまぁ、お楽しみはこれからです(関連リンク:英文関連リンク:日本語訳)

2.0が正式リリースへ

 前述のようにバージョン2.0が正式リリースされました(関連リンク:英文関連リンク:日本語訳)

 当初は5周年記念と同時にリリースする、という計画もあったのですが、不具合が見つかったために若干遅れてしまいました(関連記事)。また、今回の日本語版リリースに際しては、QA(品質確認)テストを行いました。このテストには、多くの方々のご協力をいただいています(関連リンク)

 英語版リリースのアナウンスから、日本語版のアナウンスまでは若干のタイムラグがあります。この理由は、QAテストなどを行っていたためです。ただし、土壇場でQAテストを行っても、すぐに改良版を作ってリリースできるわけではありません。どのようにリリーススケジュールとタイミングを取るかは、今後の課題です。もっと上流のタイミングで、日本からフィードバックしていく必要があるでしょう。

2.0をダウンロードするためには

 日本語版用のダウンロードページを用意しています(関連リンク)。ファイル配布には、Ring Server ProjectKDDI Labs窓の杜などに協力いただいてます。関連する今回のトピックとしては、オープンソースP2Pファイル共有ツール「BitTorrent」でのダウンロードも可能になりました(関連リンク)

 特に、Ring Server Projectの提供するリングサーバは、複数で同じ内容を同期するように設定されたサーバ群であり、いずれのサーバにアクセスしても同じものがダウンロードできます。このため、ユーザーがアクセスすると一番近いサーバに優先アクセスするための「TENBIN」、空いているサーバに優先アクセスするための「DNS Balance」といった機能を備えています。これらの機能を利用して、多くのユーザーが快適にファイルを入手できるようになります。

 窓の杜では、公開開始4日間で6万件のダウンロードがあったそうです。また、公開2週目も、ダウンロード数は3万件を越えています(関連リンク)。Linuxのユーザーだけでなく、個人のWindowsユーザーにも注目されてきたといえます。

OpenOffice.orgコミュニティーマネジャーが来日

 先月(10月号)も紹介した通り、OpenOffice.orgプロジェクトのコミュニティーマネジャーであるLouis Suarez-Potts氏が来日しました。

 10月29日には、関西オープンソース2005にて「OpenDocumentとOpenOffice.orgがもたらすもの」と題する講演を行い、同氏は、オープンソースとオープンスタンダードが、ソフトウェアの社会的な役割を変えつつあることを強調しました。その変化には誰でも参加できることと言います(関連リンク)

 11月1日には、東京でプレスブリーフィングを開催しました(関連記事関連リンク)。こちらでは「OpenOffice.org を重要にする4つの理由」という講演を行い、「オープンソース、企業によるサポート、多くのプラットフォームへの対応、そしてオープンスタンダードが、OpenOffice.orgを重要にする」と説明しました。このイベントでは、サン・マイクロシステムズ、グッデイ、ワイズノットからも登壇いただき、OpenOffice.org、StarSuiteそれぞれに関連したビジネス利用について説かれました。

一太郎2006年版、OpenDocumentに本格対応へ

 OASIS OpenDocument Format(ODF)への対応が、広がってきています。ジャストシステムは、2006年2月に発売予定の「一太郎 2006」でOpenDocumentに対応することを発表しました(関連記事)。2006年夏には、追加モジュールとして無償提供されます。すでに「一太郎ガバメント 2006」で追加モジュールを提供することを発表していましたが、そのバリエーションでも利用できることになったわけです。

コミュニティーとの連係を深めるサン

 サン・マイクロシステムズは、これまでJavaなどの取り組みで、オープンソースコミュニティーとの連係を渋っているように見られることが多々ありました。多くのオープンソースソフトウェアの開発を支援していた立場ですが、それよりも「オープンスタンダード」であることを強調していたために、誤解されていたように感じます。

 それが、ここへ来てメッセージが変わり始めています。“Participation Age”(参加の時代)をキーワードにして、実際にコミュニティと協調し始めています(関連記事)。OpenOffice.orgとの関連では、開発の90%をサンが担っていますし、主要な10カ国語版のローカライズも担当しています。バージョン2.0の日本語版のローカライズでは、オンラインヘルプの翻訳の一部を日本ユーザー会の翻訳プロジェクトと共同で行いました。JavaOne Tokyo 2005では、OpenOffice.org/OpenSolaris/NetBeansのブースが設置されていたので、そのデモ実演に日本ユーザー会からも参加しました。ひとつひとつの活動は小さなことですが、大きな意味を持っていると思います。

Microsoft Officeとの互換性は?

 この数カ月、バージョン2.0のリリースに向けて多くの場所で新バージョンをデモしてきました。そこで一番多かった質問は「Microsoft Officeとの互換性は、どの程度なのですか?」という質問でした。

 OpenOffice.org2.0は、Microsoft Officeと高い互換性を実現しています。これは、新バージョンの開発目標の一つでした。実際のところ、特集「OpenOffice.org 2.0が変えるオフィスアプリ基準」で各ツールの互換性を検証してきたように、ファイル形式や操作性などで互換性が確実に高まっています。バージョン1.0などの古いバージョンでがっかりした人には、ぜひ新バージョンを試してほしいと思います。

 広報する場合によって、互換性をウリにしないことがあります。「Microsoft Officeと高い互換性を実現している」ことを前面に押し出すと、ユーザーが過度の期待をしてしまい、試した時にがっかりすることがあるからです。特にインターネットでは、反応が過敏になりがちであり、できれば実際に試してもらい「かなり使えるではないか」と多くの人に言ってもらうのが理想です。

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