越前和紙の安全性を追跡、福井県和紙工業協同組合のトレーサビリティシステムRFIDと連携して信頼感を獲得する(後編)(2/2 ページ)

» 2005年11月22日 08時02分 公開
[先織久恒,SOFTBANK Creative]
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 顧客から「ホルムアルデヒドは含まれていないのだろうか」「紙の上に乗せた食べ物に薬品が付かないのだろうか」等の不安の声が福井県和紙工業協同組合に寄せられていましたが、「和紙トレーサビリティシステム」で、いつ・誰が・どの原材料を使ってこの越前和紙を抄き上げたのかをすべてオープンにしました。

 消費者の方から「和紙トレーサビリティ番号」を指定していただいて、その和紙に使用したMSDS(化学物質等安全データシート)を調べることも可能になりました。組合では万が一、組合員に供給した原材料・薬品に問題があれば、このシステムでどの組合員が生産した越前和紙に影響があるかが捕捉しすぐに対応することができます。

 トレーサビリティシステムには、最初のISOの定義で触れましたが、第3者機関の証明・保証という問題がありました。

 しかし「和紙トレーサビリティシステム」では、コストの問題により「第3者の証明」を外しました。会計監査機関が監査した決算書でも後から使い込みや利益操作が発覚しています。いくらコストを掛けたら絶対に間違いがない証明ができるのでしょうか。

 福井県和紙工業協同組合では「組合は組合員を全面的に信用します。正直にトレース管理報告書を書いてください。1社でも嘘を書いたらこのシステムは崩壊します。同時にこの越前和紙の産地も信用を失い消滅するでしょう」と組合員に説明し、第3者の証明のない、世界で最初の「和紙トレーサビリティ管理システム」にチャレンジしております。

 スタートしてみると、勘と経験に頼った生産が、報告書を書く事により多少、品質管理の感覚が生まれてきたような感じもします。

越前和紙トレーサビリティのページ 越前和紙トレーサビリティのページ

 報告書の記入は、組合員に高齢者が多いことを考慮し、組合員の工場では「手書き」を原則としました。あえてパソコン入力を原則とはしませんでした。手書きの「和紙トレース番号管理受付証(報告書)」は組合でスキャンしWebに上げました。消費者の皆さんが手元の越前和紙商品に添付された「和紙トレーサビリティ番号」を入力されるとPDFで見ていただけるようにしました。

 「越前和紙」のホームページ(http://washi.jp/)の「和紙トレーサビリティ」のページでサンプルをご覧いただき、感想・ご批判のお声をお聞かせください。そのお声が越前和紙に反映し、1000年先まで生き続ける越前和紙となります。

先織久恒氏

NPO法人 福井県情報化支援協会 理事長 ITCインストラクタ
ITコーディネータ

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